はじめに
はじめの一歩!ソースコード管理に必要なバージョン管理とは では、さまざまなバージョン管理ソフトウェアを紹介しました。CVS(Concurrent Versions System)を使った解説は CVS:バージョン管理システムのチュートリアル をご覧ださい。
今回は、集中型のバージョン管理ソフトウェアの Apache Subversion の環境を構築し、簡単に使い方を解説します。
なお、構築に使用したマシン環境は、下記のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
OS | Windows 7 Ultimate 32bit |
IPアドレス | 192.168.0.253 |
Cygwin | Setup Version 2.831 |
VirtualBox | 4.3.4 r91027 |
Vagrant | 1.3.5 |
上記のソフトウェアと環境を使って解説を進めていきますが異なる環境でも同様の操作は可能です。また以下の記事を参考にして仮想環境の構築を解説していますので参考にしてください。
Subversionとは
Subversionは、1990年にリリースされた集中型のCVSに使い勝手が良く似た、集中型のバージョン管理ソフトウェアとして、2000年10月にリリースされました。CVSは、Subversionが登場するまで多くのオープンソースプロジェクトにおいて使用されていましたが、Subversionのリリースによって、集中型バージョン管理ソフトウェアの主流が、Subversionにシフトしたことにより、2008年5月にリリースされたバージョン 1.11.23を最後に新しいバージョンはリリースされていません。このように、Subversionは、登場から現在まで集中型のバージョン管理ソフトウェアの主流としてさまざまなプロジェクトで使用されており、現在も開発が続けられています。Subversionは、CVSに似たコマンドを使用できる事から、CVSからの移行がしやすいバージョン管理ソフトウェアだと言えます。
リポジトリサーバーの構築
リポジトリを管理するリポジトリサーバーを構築します。
BOX起動
前回の記事で作成したBOXを起動し、BOXに接続します。
$ cd /tmp/unix
$ vagrant up
$ vagrant ssh
Subversionのインストール
CVSと同様に、多くのLinuxディストリビューションではSubversionがインストールされていませんので、パッケージ管理コマンドを使用してインストールします。
$ sudo yum -y install subversion
SSHサーバーの設定変更
リモートからSubversionのリポジトリを操作する際に、SSH接続を利用しますが、セキュリティを考慮してSSH公開鍵のみでユーザーを認証するようSSHサーバーの設定を変更します。
この設定後は、SSH公開鍵がvagrantユーザーの認証鍵ファイル(authorized_keys)に登録されていないユーザーからの接続が拒否されます。このため、新たにリモートユーザーの操作を許可するためには、リポジトリサーバーに接続可能なユーザーがSSH認証鍵を認証鍵ファイルに追加する必要があります。
/etc/ssh/sshd_config を下記のとおり編集します。
$ sudo vi /etc/ssh/sshd_config
UsePAN no
PasswordAuthentication no
RSAAuthentication yes
PubkeyAuthentication yes
編集が終了したら、SSHサーバーを再起動します。
$ sudo service sshd restart
以上の手順で、リポジトリサーバーの構築が終了します。
Subversionによるバージョン管理
リポジトリサーバーが構築できましたので、バージョン管理を行います。
リポジトリの作成(create)
CVS同様、バージョン管理を行うファイルやフォルダ(以下、オブジェクトと記す)、変更履歴などを格納するリポジトリを作成します。
リポジトリの初期化方法は、CVSではinitコマンドを使用してリポジトリを初期化しましたが、Subversionでは、svnadminを使用してリポジトリを初期化します。
$ svnadmin create /home/vagrant/myrepos
実行すると、ホームディレクトリ下にmyreposリポジトリが作成され、バージョン管理に必要なファイルやフォルダが生成されます。
リポジトリに格納されているモジュールを確認します。
リポジトリを作成しただけですので、モジュールが何も格納されていないことがわかります。
$ svn list file:///home/vagrant/myrepos
なお、CVSではリポジトリの指定に環境変数CVSROOTを使用できましたが、Subversionでは、セキュリティに配慮し環境変数によるリポジトリの指定はできません。
以上で、リポジトリの初期化が終了します。
モジュールのインポート(import)
バージョン管理の対象となるオブジェクトをモジュールとして登録します。
importコマンドでは、オブジェクトを指定し、リポジトリURL/モジュール/プロジェクトの書式で、リポジトリにインポートします。
今回の場合、下記のとおり指定しています。
項目 | 内容 |
---|---|
バージョン管理の対象 | ~/.ssh |
リポジトリURL | file:///home/vagrant/myrepos |
モジュール | ssh-config |
プロジェクト | ssh-vagrant |
Vagrant | 1.3.5 |
$ svn import .ssh file:///home/vagrant/myrepos/ssh-config/vagrant -m'First Import'
登録された、モジュール、プロジェクト、オブジェクトを確認します。
// モジュール確認
$ svn list file:///home/vagrant/myrepos
// プロジェクト確認
$ svn list file:///home/vagrant/myrepos/ssh-config/
// オブジェクト確認
$ svn list file:///home/vagrant/myrepos/ssh-config/vagrant
今回は、理解しやすさを考慮して、リポジトリを作成し、モジュールを登録していますが、Subversionでは、下記のフォルダを含むリポジトリレイアウトを推奨しています。
フォルダ | 使用目的 |
---|---|
trunk | Wメインで使用しているオブジェクトを格納するフォルダ |
branchs | trunk(幹)をコピーしたフォルダ(枝) |
tags | 開発の目安や区切りとして作成されるフォルダ |
このため、推奨レイアウトを使用したリポジトリの登録とインポートは、下記のようになります。
// svnrepoリポジトリを作成
$ svnadmin create /home/vagrant/svnrepo
// 推奨されるtrunk/branches/tagsフォルダを作成
$ svn mkdir --parents file:///home/vagrant/svnrepo/ssh-config/vagrant/trunk -m'create trunk'
$ svn mkdir --parents file:///home/vagrant/svnrepo/ssh-config/vagrant/branches -m'create branches'
$ svn mkdir --parents file:///home/vagrant/svnrepo/ssh-config/vagrant/tags -m'create tags'
// オブジェクトをtrunkにインポート
$ svn import .ssh file:///home/vagrant/svnrepo/ssh-config/vagrant/trunk -m'First Import'
// リポジトリ確認
$ svn list file:///home/vagrant/svnrepo
このように、Subversionに登録するオブジェクトは、どのような階層構造であってもインポートすることができます。
また、作成するリポジトリ構成も、こうしなければならない(must)というものでは無く、推奨(recommend)という扱いですから、管理しやすいリポジトリ構成を作成しましょう。
また、CVSと同様に、リポジトリ操作においてメッセージを入力する必要があるmkdir/import/commitなどのコマンドを実行する際に、-mオプションを指定してメッセージを指定していますが、環境変数SVN_EDITORにエディタを指定しておくと、エディタ上で、メッセージを入力することができます。
export SVN_EDITOR=vi
チェックアウト(co)
登録したモジュールを、任意のフォルダ上にチェックアウトします。
$ cd /tmp
$ svn co file:///home/vagrant/myrepos/ssh-config/vagrant
CVSと同じようにチェックアウトできますが、CVSの場合、ssh-configフォルダが作成されるのに対して、Subversionでは、vagrantフォルダが作成されてチェックアウトされます。
両方のコマンドを実行して比べてみて下さい。
$ cd /tmp
$ cvs co sh-config/vagrant
承認(commit)
チェックアウトしたモジュール中のファイルを修正し、リポジトリに反映(コミット)します。
$ cd vagrant
$ vi authorized_key
$ svn commit -m'authorized_key update'
実行すると、リビジョン1からリビジョン2に変更されたことがわかります。
更新(update)
Subversionによるバージョン管理も、複数名によりリポジトリが更新されて行きますので、自分がチェックアウトしたモジュールを最新版にアップデートする必要があります。
ここでは、別フォルダにチェックアウトしたモジュールをコミットした後、更新しています。
/tmp/workフォルダ上でチェックアウトし、修正後にコミット
$ mkdir -p /tmp/work
$ cd /tmp/work
$ svn co file:///home/vagrant/myrepos/ssh-config/vagrant
$ cd vagrant/
$ vi authorized_keys
$ svn commit -m'commit on work folder'
/tmp/vagrant上で更新
$ cd /tmp/vagrant
$ svn update
/tmp/work フォルダでチェックアウトしたファイルのリビジョンが、コミットによってリビジョン3に上がり、/tmp/vagrant フォルダでアップデートしたファイルもリビジョン3に更新されたことがわかります。
追加(add)
作業用フォルダにファイルを追加し、リポジトリにコミットします。
ここでは、/tmp/vagrant フォルダ下のファイルを別名(known_hosts)にコピーして、追加(add)の後コミットしています。
$ cd /tmp/vagrant
$ cp authorized_keys known_hosts
$ svn add known_hosts
$ svn commit -m'add known_hosts'
次に、/tmp/work/vagrantフォルダ上で、リポジトリを更新すると追加したファイルが取得できます。
$ cd /tmp/work/vagrant
$ svn update
リモートからのバージョン管理
Windows上のCygwin端末から、リポジトリを操作します。
なお、SubversionはCygwinのデフォルトインストールではインストールされませんので、Cygwin + rbenv環境でプロビジョニングサーバーを構築する方法(第1回)~Cygwinを用いて、rbenv環境を構築する を参考にして、Subversionをインストールして下さい。
ssh-agentの準備
リポジトリサーバーに接続可能なSSH公開鍵にパスフレーズが設定されている場合、リポジトリへの操作の度にパスフレーズを要求されますので、ssh-agentを使用してパスフレーズ入力を代替します。
Cygwin端末を起動し、SSH秘密鍵を登録します。
$ ssh-agent bash
$ ssh-add ~/.ssh/id_rsa
登録の際に、パスフレーズを要求されますので、パスフレーズを入力します。
以上で、ssh-agentの準備が終了します。
チェックアウト(co)
リモートからモジュールをチェックアウトします。
先に設定した、ssh-agentによってパスフレーズを要求されること無く、モジュールのチェックアウトができます。
$ svn co svn+ssh://vagrant@192.168.0.10/home/vagrant/myrepos/ssh-config/vagrant
ログ参照(log)
ファイルの変更履歴を表示します。
$ svn log
状態表示(status)
自分が変更したファイルを確認します。
CVSのstatusコマンドでは、作業フォルダ上のファイルの状態を表示しましたが、Subversionでは変更したファイルを表示します。
$ svn status
変更したファイルがあれば、ファイルの状態を表示します。
変更をコミットすると、何も表示されなくなります。
モジュールをチェックアウトすると、リポジトリの操作は、モジュールの登録を含め全てローカル上と同じように操作できます。
まとめ
ここまで、Subversionの環境を構築し、簡単な使い方を解説しました。Subversionは、CVSに変わる集中型バージョン管理ソフトウェアとして現在も開発されており、CVSに無い柔軟なリポジトリ構成によって使いやすくなっています。今回紹介したコマンドを使って、バージョン管理にトライしてみましょう。
次回は、git環境の構築と、基本操作の説明をします。
参考記事
リモートリポジトリを使うなら、tracpath(トラックパス)が便利です!下記記事をぜひご参照下さい。
■tracpath(トラックパス)を使って、安全に複数名でバージョン管理を行う
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