スマートフォンのような機能を内臓しているスマートウォッチや、自分の心拍数や睡眠状態などの身体データを計測するようなスマートリストバンドといったウェアラブル・デバイスは、テクノロジーや健康への興味が高い人のみが使用するガジェットという位置づけのように思われるのが一般的です。
しかし、宇宙飛行士やパイロット向けのヘッドセットを販売し、世界20ヶ国に営業所を展開する米国企業プラントロニックスの最高技術責任者(CTO)を務めるジョー・バートン氏によれば、ウェアラブル・テクノロジーは「1994年にウェブが登場した時以来の大きな変化を消費者にもたらす」程の物だといいます。(1)
その理由として、半導体の小型化によって身に付けるものがどんどんウェアラブルになっていき、通信回線やアルゴリズムが進化していくことで、私達の身体と周りの環境のデータをウェアラブル・デバイスが収集し、人工知能がそれを分析することによって、利用者に的確なアドバイスや情報を与えてくれるようになることが挙げられます。
↑ウェアラブル・デバイスのインパクトは、ウェブの誕生に匹敵する
人工知能の成長は目覚ましく、2050年までには人間の知能を超えるとも言われています。現時点でも、話し方から本質的なパーソナリティを当てたり、顔の表情からその人の感情を読み取ったり、また実験段階ではあるものの、血液成分を監視する、Bluetooth内蔵の超小型センサー付きインプラントを使えば、心臓発作が起こる何時間も前にその予測ができるようになっています。(2)(3)
また、2016年の1月にはグーグルの人工知能「AlphaGo」が囲碁の試合で一流棋士を打ち負かすまでに成長しており、すでにグーグルの人工知能は、写真に写っているものが何であるかを理解し、更にそれを説明できるまでに進化していて、人の身体の情報だけでなく、周りの環境さえも理解できるのだと言います。
↑人工知能はすでに、人間以上の世界を把握しているのかもしれない
今普及しているウェアラブル・デバイスは、スマートウォッチやスマートリストバンドといった、いかにも機械が搭載されているという見た目のものばかりです。
近年では鍵を開けたり、情報を握手で交換したり、血糖値が下がると教えてくれる手の中に埋め込むデジタル・タトゥーや、服に編み込むとタッチセンサーとなる繊維などが開発されていて、見た目がテクノロジーには全く見えない、もしくはテクノロジーが使われているのかわからなくなるものが出来てきています。
ウェアラブル・デバイスの市場は2015年には223%も増えていて、2020年になる頃には、テクノロジーを搭載したスマート服が1年に1,020万台は売られるだろうと予測されています。
2015年にはおよそ49億のモノがインターネットに繋がっていたのが、2020年には500億のモノがインターネットに繋がり、いずれは99.4%のモノがインターネットに繋がると言われていることも考えれば、私達が何気なく着る服や靴、そしてアクセサリーといったありとあらゆるものがウェアラブル・デバイスとなる未来は、そう遠くないのかもしれません。
↑いずれ、着るもの全てがウェアラブル・デバイスになる
こうしてウェアラブル・デバイスを誰もが身につけるようになってくると、その人の位置情報や行動パターン、そして身体や心の状態といった、ありとあらゆるデータが収集されるようになり、私達の生活はそうしたデータを基盤にしたものになっていく可能性があります。
例えば、シリコンバレーで最も尊敬されていると言われる投資家のマーク・アンドリーセン氏は、ウェアラブル・デバイスから得られる情報によって、私たちの買い物が次のように変わると述べています。
「近い将来、店舗は客が店に入ってきた時にはそれが誰であり、何を望んでいるのかわかるようになるはずだ。今はそう聞くと少々不安になるかもしれない。しかし20年後には、店に入って向こうが自分を知らなかったら驚くようになるだろう。」(4)
↑お店側は、入った瞬間にあなたの買いたい物を特定する
また、人工知能がこれから更に成長し、ウェアラブル・デバイスが私たちの居所、感情、そして身体の状態をいつでも知るようになるのだとしたら、それらの情報を汲み取って、気分に合わせて音楽や映画、または本を選択してくれたり、疲れ具合からもう休んだ方がいいと教えてくれたり、街中を歩いていると今の自分にちょうど合ったレストランを選択してくれるSFの世界のような出来事も、決して夢物語ではないのかもしれません。
ウェアラブル・デバイスの中には、すでに脳波を測定して精神状態を読み取れるヘッドバンドや、顔の表情から感情を読み解くもの、更には着用者の感情を測って記録し、それに応じて解決策を教えてくれるリストバンドなども開発されています。
そうした物がBluetoothや4G、もしくは5Gの通信回線からインターネットに繋がって位置情報を得たり、音楽プレイヤーと繋がったりすることで、ウェアラブル・デバイスが私達の生活をサポートしてくれる世界は実現していくのではないでしょうか。
↑気分、感情、そして居所、すべてがデータとして蓄積される
人工知能による分析は、データの量が多ければ多いほど正確になり、そこから受ける恩恵もどんどん大きくなっていきます。
ウェアラブル・デバイスからのデータを人工知能が絶えず蓄積し、同時に技術革新によって人工知能が賢くなっていくことで、ウェアラブル・デバイスが家族、そして親友よりも私たちのことを知る秘書のような存在になっていくのではないでしょうか。
コンピュータは初め、大きな置物で、それからノートパソコン、タブレット、スマートフォン、そしてスマートウォッチと、どんどん小型化していつでも持ち歩けるようになりました。
ウェアラブル・デバイスがこれからどんどん発展していけば、身体中にウェアラブル・デバイスを着けることは当たり前となり、コンピュータは身体の一部になることで、そこから得られるデータを基にした新しいライフスタイルが始まっていくのかもしれません。
参考書籍)
(1)ロバート・スコープル、シェル・イスラエル「コンテキストの時代 ウェアラブルがもたらす次の10年」(日経BP社、2014)P2984
(2)クリストファー・スタイナー「アルゴリズムが世界を支配する」(角川書店、2013年)P3757
(3)ロバート・スコープル、シェル・イスラエル「コンテキストの時代 ウェアラブルがもたらす次の10年」(日経BP社、2014)P2231
(4)ロバート・スコープル、シェル・イスラエル「コンテキストの時代 ウェアラブルがもたらす次の10年」(日経BP社、2014)P985
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