(Photo by:BTO – Buy Tourism Online powered by BTO Educational)
マイクロソフト、アップル社、そしてIBMなどの外資系企業のみならず、最近ではNTTコミュニケーションなど国内の企業も、社内に「エバンジェリスト」という肩書きの人々を設置しており、近年、エバンジェリストはIT企業のマーケティングにおいて、非常に重要な役割を果たすようになりましたが、つい数年前まで、よくわからない肩書のトップにランクインしていました。
エバンジェリスト(Evangelist)とは、もともとはキリスト教の伝道者のことで、アップル社でエバンジェリストを務めたガイ・カワサキ氏は、エバンジェリストは、「肩書ではなく、生き方」だと述べており、どれだけ素晴らしい技術があっても、技術のことが分からない一般的ユーザーに対して、その技術が私たちの生活をどのように変えていくのかを分かりやすく伝える人達がいなければ、市場には広がっていくことは難しくなります。」
↑エバンジェリストは肩書きではなく生き方 (Photo by:OFFICIAL LEWEB PHOTOS)
企業の経営者にとって、最適なシステムやサービスを選択することは、企業戦略において必要不可欠ですが、同時にITの仕組みはどんどん複雑になるため、専門的な知識を含めて理解し、最終的にそれらを導入するかどうかを決定するのは、ますます難解になってきています。
テクノロジー関連のリサーチを専門に行っているフォレスター・リサーチによれば、97%のCMO(最高マーケティング責任者)は、市場において差別化を図るために、なにか手を打たなければならないと思いながらも、そのうちの約60%は、現状の変化についていくことさえ難しいと感じているそうです。
↑次々に新しい製品が出る、現状についていくことすら難しい (Photo by:Johannes Marliem)
エバンジェリストは、ただ自社のサービスの宣伝をするのではなく、それが顧客の経営をどのように変えるのか、聞き手に未来を見せることが求められ、日本マイクロソフトのエバンジェリストである西脇資哲氏も、エバンジェリストの使命は、「商品の説明をすることではなく、価値を伝えること」だと述べています。
↑未来を見せて価値を伝えること (Photo by:Ambassador Base)
キリスト教の著名な伝道者であるビリー・グラハムは、1998年にTEDにて講演を行いました。
当時80歳になろうとしていたグラハム氏は、メモを持って壇上に上がったことを聴衆に謝罪し、それ以前はどんなときもメモなど用いずに、アドリブで語り続けていたと述べましたが、エバンジェリストもメモやスライドに頼らず、できる限り自分の言葉で想いを伝えていかなければなりません。
「極端なことを言えば、製品にも会社にもこだわりたくなかった。マイクロソフトのすべてを伝えたかったのだ。いや、ITの魅力を伝えたかったのだ。マイクロソフトを利用して。」
(日本マイクロソフトのエバンジェリスト:西脇資哲)
↑メモやスライドに頼らず、自分の想いを正直に伝える (Photo by:ImagineCup)
西脇氏は、2014年のウィンドウズ・フォンのデモストレーションの際に、日本マイクロソフト社の樋口社長をも臆せずに巻き込んで、社長とのコミカルな掛け合いで会場を沸かせました。
場の空気によって語り方を変えるエバンジェリストは、意識しているか否かに関わりなく、「オプラの法則」を実践ているとも言われます。
「オプラ」とは、アメリカで非常に影響力のある女性司会者、オプラ・ウィンフリーのことで、ヒラリー・クリントンの次の女性大統領候補とさえ言われている人物ですが、彼女は番組でゲストと会話するときも、相手を説得してやろうとか、データで言い包めてやろうとは決してせずに、相手のハートに触れるようにしており、いくら良い製品を作っても、その製品の良さを伝えられなければ、顧客を動かすことはできません。
↑オプラの法則「機械的なトークは絶対にNG」 (Photo by:aphrodite-in-nyc)
1995年から1997年までアル・ゴア副大統領のスピーチライターを務めたダニエル・ピンク氏は、そのようなスタンスを「謙虚さ」と呼び、謙虚さを持っている人は、人を動かすことに長けているとして次のように述べています。
「そのような人たちは、わたしは小さな椅子に座るから、大きな椅子にどうぞ、という態度を取る。」
エバンジェリストの西脇氏も、どうすれば人に伝わるのかを常に考え、持ち込むデモストレーション用の器材はすべて自腹で購入することで、愛情も強くなり、プレゼンテーションではそうした愛情も必ず伝わると述べています。
↑主役はあくまで、ユーザーとオーディエンス (Photo by:Ethan Beute)
起業家でミュージシャンでもあるデレク・シバーズは、TEDトークで一つの動画を紹介しました。
それは一見、頭のおかしいように見える男性が屋外のコンサートでひとりで踊っているもので、上半身裸、裸足で思い切り楽しんでいる彼に、最初は誰も近づこうとしませんが、そこに1人の男性が近づくと、その後に1人、また1人と加わり、あとは堰を切ったように人がなだれ込みます。
デレクはこれを、「最初のフォロワーの原則」と呼び、「最初のフォロワーが孤独な愚か者をリーダーに変える」と述べています。
↑最初のフォロワーがその製品やサービスを印象づける (Photo by:Betsy Weber)
言うなれば、エバンジェリストはこの、「最初のフォロワー」に値し、誰よりも自分が紹介する製品を愛し、後になだれ込む人々を引き寄せるのですが、このエバンジェリストの視点を、技術者であれ、営業マンであれ、「価値を知る」すべての人たちが持つことができれば、テクノロジーの世界はもっと開けていくのかもしれません。
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