(Photo by:Steve Jurvetson)
バルト海を挟んで北欧に面しているエストニアは、ロシアから独立してまだ25年ほどの新しい国で、1,500個以上の島からなる物理的な制約を背景に、全てをIT化する政策が進められており、昨年末に始まった「e-government」は、国籍や居住地を問わず、誰でもIDカードを取得すれば、それ一つでエストニアのさまざまな公的サービスが受けられることから、世界で初めての「国境のない国」になると注目されています。
安倍総理大臣もこのIDカードを取得したことが、日本でも話題になりましたが、今年4月より世界34カ国のエストニア大使館にて、このIDカード申込み受付が始まって以来、12,000人以上の外国人申請登録があり、その多くは、アメリカ、フィンランド、イギリス、カナダ、そしてインドなどのIT先進国の人たちが占めています。
↑1,500個以上の島からなる物理的な背景が産んだIDカード (Photo by:Kain Kalju)
このIDカード一つあれば、オンライン上で必要な手続ができるため、リモートで銀行口座開設や会社登録をして、海外からの新ビジネス、特に投資や貿易へのビジネス展開をすることも可能で、実際に申請した外国人の約半数は、IDカードをきっかけとして、エストニアに会社を設立する意欲を示しており、インド出身で現在アメリカに住むAditya Nag氏も、以下のように述べています。
「(この制度を使えば)ヨーロッパに会社の拠点を持ちながら、住む場所が選べる。将来はこんなスタイルが一般的になるだろう。」
↑カード一枚あれば、銀行口座も開けて会社登録もできる (Photo by:Steve Jurvetson)
エストニアの隣国であるロシア在住のOleg Antipanov氏は、「ロシアでビジネスを行う為には奇妙な必要事項がたくさんあり、もし会社の銀行口座を開きたいなら、たとえ別の場所で働いているとしても、会社のオフィスの写真を見せて、固定電話を所有しなければいけない。」と、自国での起業の不満を訴えた上で、IDカード一枚で行う公的手続きの簡素化を評価しています。
エストニア「新しいやり方で、外国の目を一気に惹きつける」 (Photo by:Steve Jurvetson)
エストニアが公的サービスを電子化し、ボーダーレス化を進める背景には、人口約130万人の小国であることや、海外へ輸出できるような資源がほとんどないこと、さらに、いまなおロシアなどの近隣大国からの国土侵入への脅威など様々ですが、エストニア政府CIOのTaavi Kotka氏はエストニアの変化について、次のように述べています。
「国境のない電子政府と電子住居権(e-resident)施行の目的は、エストニアを近代的で、世界に開かれた政府系サービスを提供する発展した国に変えることだ。」
↑海外の目を引きつけなければ、高いスキルを持った人はどんどん国を離れる (Photo by:Security & Defence Agenda)
オンライン関連のハイテク産業のGDP比率は、日本ではまだ4.3%ですが、エストニアでは約15%を占めるまでに成長しており、スカイプやSportlyzerなど、多くのIT分野で成功しているベンチャー企業を輩出している過去の実績からも、政府の明確なメッセージや具体策が、国民に十分伝わっており、急速に進むIT化がエストニアに明らかな発展をもたらしていることがわかります。
Skypeもエストニアから(Photo by:quinn.anya)
日本で初めてこのIDカードを取得した、スーパーアプリ代表の小森努氏は、電子住居コミュニティーリーダーとして、日本人企業家向けにエストニアへの電子居住に関するセミナーの開催、情報交換の場として日本語版Facebookの開設、そして親日家の多いエストニアの国の魅力を伝える観光招致活動を行っていますが、小森氏自身もこの制度を利用し、今年4月にエストニアに常駐し会社を立ち上げるとして、以下のように話しています。
「この先電子住居制度がもっと普及すれば、海外ベンチャー企業が集まりやすく、欧州やロシアへビジネス展開もしやすくなるだろう。」
↑エストニア経由で、ヨーロッパへのビジネスもどんどん加速する(Photo by:Michiel Jelijs)
世界73カ国にいるエストニアの電子住人の中には、日本の安倍総理大臣やイギリス「The Economist」誌の編集主任Edward Lucas氏、Skype前執行役員のMichael Jackson氏など、さまざまな分野のトップランナーが含まれ、現在世界中で18,000人以上が強い関心を持った上でプログラムニュースレターを購読しており、世界銀行や、The world economic forumが、エストニアを世界で最も効率的にビジネス展開がし易い国の一つに繰り返しランク付けしていることからも、今後エストニア住人が増えることは確実視されています。
イギリスのキャメロン首相もデジタル化に興味を示す (Photo by:Foreign and Commonwealth Office)
自国の潜在的な弱みを冷静に分析した上で、誰もやったことのないようなアイディアに挑戦するエストニアの姿勢は、手軽さだけでなく、その気概や可能性の部分で、煮え切らない自国の政策に不満を持つ人々からの賛同を集めているのかもしれません。
エストニア政府CIOのTaavi Kotka氏も、「国家が“領土”という概念から解き放たれるのです。 今、新しい国を創るとすれば、必要なのは領土ではなく、“人”です。」と述べていますが、IT社会のトップを走るエストニアは、そこに賛同する人を国民と認め、みんなで新たな社会の形を作り出していこうとしており、エストニアが世界の先頭を切って、これからの時代は、国の面積や立地では、国の強さは計れないということを証明していくのかもしれません。
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