人類の進化は芸術でもなく、異性をめぐる生物の競争による性淘汰でもなく、テクノロジーの発達によって急激に進んだと、ブラッドフォード大学で考古学を教えるテイラー氏は述べています。
その中でも近年においては、特に大きな影響を与えているのが、企業がIT技術を使って提供する「プラットフォーム・サービス」と言われるもので、これは個人や企業がサービスに参加することで初めて価値が生まれ、利用者が増えれば増えるほど、そのサービスの利便性や効用が増えていき、利用価値が上がるといった新しい性質を持っています。(1)
↑プラットフォーム・サービスはモバイル時代の新しいキーワード
従来のビジネスにおいては、「会社が作って、店に送り、そして顧客に売る」という、企業から顧客への商品の流れが『一方通行のパイプモデル』に基づいて行われていました。
しかし、「プラットフォーム・ビジネス」においては、企業はあくまで人が参加するプラットフォームを作り、その参加者達が商品などの価値を生み出しながら、同時に消費をする存在ともなるため、ビジネスの仕組みが大きく違ってきます。
例えば、プラットフォーム・ビジネスの代表格であるフェイスブックやツイッターにおいては、自分自身や友達の投稿や写真、そしてウェブサイトや動画のシェアといった活動そのものが、価値の生産となります。
そして、利用者が増えれば増えるほど、そうした投稿と消費の量が多くなっていくため、サービスの価値が上がっていき、時には社会を大きく動かすような影響力を持つようになっていくのです。
↑参加する人が増えれば増えるほど、価値が増すプラットフォーム
実際、2010~2011年のチュニジアにおいてフェイスブックは、市民同士が繋がるコミュニケーションツールとして活用されました。
政府が抑えることのできない情報交換が若者を中心に行わることで、最終的には「ジャスミン革命」という民主主義革命を引き起こしましたが、もしもチュニジアにおいてフェイスブックの利用者が少なければ、シェアされる情報も少なく、利用価値もあまり出てこないため、この革命を起こすまでの影響力を持つことはなかったでしょう。(2)
↑まずはプラットフォームの価値を高めて、利用者を増やす
2020年におけるネット通販市場は60兆円にも上り、小売り販売のおよそ20%を占めるようになると言われています。
この分野でプラットフォーム・ビジネスを展開するアマゾンや楽天も、利用者が多くなったからこそ、商品の数が増え、価格競争が起き、更には翌日には商品が届く「アマゾン・プライム」や「あす楽」といった、販売する側にとって負担ともなる追加サービスを増やすことで、利用者を増やそうとしていることが伺えます。
↑市場拡大とサービスの質の向上は比例する。
クラウドワークスやランサーズといったクラウドソーシングも、スキルの高いフリーランサーが集まり、高度な仕事を注文する依頼者も増えることで、そのプラットフォームの利用価値がどんどん上がっていく仕組みになっています。
クラウドソーシングが更に普及していくと、会社に勤めない個人事業主やチームが急増し、経営コンセプトや意思決定以外の90%の業務が、クラウドソーシングや外部委託になっていくと言われており、こうしたプラットフォーム・ビジネスは、価値が高まると同時に仕事と企業の在り方を変えていきます。(3)
↑働き方の変化が先か、それともプラットフォームの機能充実が先か(リンク)
カーンアカデミーという非営利の教育プラットフォームには、当初はコンテンツがほとんど数学の分野しかありませんでしたが、現在ではプラットフォームの利用者が増え、100人を超える大学教授や研究者、そして大学生といった参加者が学習コンテンツを作り、ボランティアがコンテンツを英語から他言語へ翻訳するほどの規模にまで拡大しました。
無償で見られる小学校から大学レベルまでの数学から経済、そして人文の分野もカバーする講義ビデオが3,000本以上、更には学習用の問題が複数の言語で載せられるようになり、誰でも高水準の教育を受けることができる新しい学習のプラットフォームとして日々拡大しています。
↑利用者が増えるほど、学べる科目もコンテンツの質も上がっていく
最近では、「Airbnb」や「Uber」といった、自分の家や車を他人とシェアするためのプラットフォーム・サービスが増えてきていますが、その他にも、世界の数十都市において、シェアできるものをグーグルマップ上にマッピングする取り組みが、Sharing Cities Networkというコミュニティによって行われています。
「ビジネスモデル2025」の著者であり、大企業や中小企業に経営や事業開発のコンサルティングを行う長沼博之氏は、今後シェアできるあらゆるものがグーグルマップ上でマッピングされるようになると述べています。
こうしたモノを共有するプラットフォーム・サービスとその利用者が更に増えていけば、私たちが住む町のありとあらゆるところに、シェアされるものがマッピングされている時代が来るのかもしれません。(4)
↑同じようなことを望む人たちが増えていけば、プラットフォームは自然と大きくなっていく
更には、時間をお金として流通させる「TIMEREPUBLIK」というプラットフォームも利用者を増やし続けています。
ここでは、互いのスキルを使った仕事をお金ではなく、時間で交換するようになっており、弁護士やプログラマー、そして教師などが登録されていますが、現時点では110か国から登録者が集まっており、通貨の在り方さえも変えつつあります。(5)
スマートフォンなどが普及したことから、プラットフォーム・サービスへの参加が圧倒的に簡単になりました。
誰もが生産者になれるようになったため、価値の創出が企業から個人に移って、「価値の民主化」が起きたと言われていますが、iphoneが生まれたのが2007年、iPadが発売されたのが2010年だということを考えれば、現在私たちが見ているプラットフォーム・ビジネスによる社会の変革は、まだまだ序章に過ぎないのかもしれません。
参考書籍)
1. 尾原和啓「ザ・プラットフォーム: IT企業はなぜ世界を変えるのか」(PLANETS,2015年) p.111
2. Marion G. Muller1, Celina Hubner「How Facebook Facilitated the Jasmine Revolution. Conceptualizing the Functions of Online Social Network Communication」(Journal of Social Media Studies 2014; 1(1)) p.28
3. 尾原和啓「ザ・プラットフォーム: IT企業はなぜ世界を変えるのか」(PLANETS,2015年)Kindle p.151
4. 長沼博之「ビジネスモデル2025」(ソシム、2015年) p.42
5. 長沼博之「ビジネスモデル2025」(ソシム、2015年) p.83
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