(Photo by:spinster cardigan)
「ものづくりの国」として日本を世界に認めさせた日本の家電メーカーが縮小し始め、ダイソンやアイロボットなどの「黒船家電」が、ぞくぞくとシェアを伸ばしており、「高くても売れる日本製品」というビジネスモデルが、壁にぶつかっています。
「ものづくり」という言葉がマスメディアなどで取り上げられるようになったのは1990年代後半で、日本の製造業の拠点がどんどん海外へ移転し、単なる「工員」にはできない「職人芸」が、日本の技術として世界に広まっていきましたが、その後、産業のあらゆる分野で、アウトソーシングやデジタル化が進み、近年、日本のものづくりは大きな岐路を迎えています。
↑この先、日本のものづくりはどこへ向かうのか(Photo by:Danny Choo)
そもそも日本の「ものづくり」の原点は、からくり人形だと言わており、その発想はかなり古く、奈良時代にまでさかのぼるとも言われています。
宣教師フランシスコ・ザビエルが紹介した機械式時計が、「からくり」の技術を大きく発達させ、鎖国から開放された明治維新以降に、その技術が機械産業を促進させて、現在の産業基盤の礎を築いたであろうことは、想像に難くありません。
↑ザビエルが日本のものづくりに大きな影響を与えた (Photo by:Bro. Jeffrey Pioquinto, SJ)
例えば、江戸時代後期から明治時代にかけて活躍し、「東洋のエジソン」と呼ばれた田中久重は、細川半蔵の「機巧図彙(からくりずい)」という本に影響を受け、20代はからくり人形師として活躍しましたが、その後、空気圧の原理を利用して、長時間明かりを灯し続けることができる「無尽灯(むじんとう)」、船舶用蒸気機関、そして電信機を発明し、日本の工業化に大きく貢献しました。(田中久重 – Wikipedia)
↑日本の「ものづくり」の原点はからくり人形(Photo by:indri)
江戸っ子の気前の良さを示す言葉として、落語などにもよく登場する、「江戸っ子は宵越しの銭を持たない」という言葉がありますが、一説には職人が一旦お金を貯めこんでしまうと怠惰になることから、その日のうちに全部使って自分を追い込み、職人としての腕を一生かけて磨いたとも言われます。
職人の世界においては、自分の技を言葉で教えることはせず、ひたすら目の前のものと向き合い、技を見て真似る以外に伝承の方法は存在せず、それは「ものづくり」が単に言語によって説明付けられるような合理的な知識ではなく、毎日の研鑽からしか得ることのできない、「非科学的な」芸術だと考えられているからではないでしょうか。
↑職人の世界において、自分の技術を言葉で伝えることはまずない(Photo by:MIKI Yoshihito)
日本を代表するレコーディング・エンジニアで、「宮大工」とも称される鈴木智雄氏は、40歳で勤めていたソニーを退職する際に、「録音だけでなく、すべての音に携わるエンジニアを名乗れ」と当時のソニー代表取締役、故・大賀典雄氏から言われたそうです。
鈴木氏は、創造的な仕事をすることを何よりも大事にし、同じ道を目指す若者にも、本気でオーディオの世界に取り組むようにと勧め、そのプロセスは「一生かけて高みを求めていく修行の道」であり、それを若い世代に伝えていかなければ、人として存在した意味がないと語気を強めます。(「創意 技 伝承 音楽の厨房から」鈴木智雄)
↑志を次の世代に伝えなければ、人として存在した意味がない (Photo by:246-You)
日本のものづくりと欧米の市場戦略を比較した、国立科学博物館の鈴木一義氏は、「ナンバー・ワンになるまで相手をつぶして蹴散らかすのが欧米のやり方で、日本のものづくりは相手をつぶさない。」と述べており、欧米の資本主義中心のモデルと日本のものづくりは、根本的な何かが違うのかもしれません。
フォードが20世紀初頭にとった市場戦略は、「T型フォード」という単一製品を大量生産することにより、低価格を実現し、製造工程は極端に単純化することで、膨大な非人間的な「工員」が生み出されました。
これに対して、戦後、白洲二郎がトヨタの開発担当者に、「かけがえのない車を目指せ」とアドバイスしたように、トヨタのカンバン方式は、多種多様な車種をいかに、「無理・無駄・ムラ」なく生産できるかを研究した際に考えられた方式であり、このシステムは一人一人が複数の作業工程をこなして初めて実現できるため、優秀な「職人」がいなければ支えることができません。
↑人間味がないと支えられないトヨタのカンバン方式(Photo by:Tomo)
からくり人形から世代を超えて伝えられてきた日本の「ものづくり」は、勝って「ナンバー・ワン」になることではなく、極めて「オンリーワン」になることを目指してきました。
資源は少なく、人口も少ない日本が、物質的な「もの」での競争では世界に対抗できないとしても、「ものづくり」に込められた心さえ継承できれば、いつの時代でも普遍的な価値を創りだすことができるのではないでしょうか。
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