1960年代にNASAに勤務していた科学者、ジェームズ・ラブロック氏によって提唱された「ガイア理論」は、地球と地球に生きるすべての生物はつながり合っていて、ひとつの巨大な生命体を作り上げているという仮説であり、その理論によれば、地球で起きている現象はバラバラでランダムに起きているわけではなく、相互に関連しあっているそうですが、その関連性は普通の人からはなかなか読み解くことができません。
1960年代当初、多くの科学者はこの理論を受け入れがたく感じていましたが、今や時代の先を見据えていた「ガイヤ理論」は、急速に進むテクノロジーによって実現化されつつあり、世界中にばらまかれたセンサーやチップが様々な情報を吸い上げ、その情報が人工知能によって分析されることで、コンピュータの「手足」である他のデバイスに指示を出すことが可能になりつつあります。
↑地球上で起きているほとんどの現象は、一本の線で繋がっている
自身もビッグデータとAIを活用して、世界の頭脳になることを目指すと掲げた株式会社メタップスを率いる佐藤航陽氏は、あらゆるテクノロジーは「人間を拡張する」という本質を備えていると述べており、つまり、人間そのものに備わっているコミュニケーションのための器官は「口」ですが、ペンと紙を用いて、人間は「書く」ことを学び、時代を超えて情報を記録に残せるようになり、現在では、コンピュータというテクノロジーを使用することによって、短時間で大量の情報を保存し、かつ他者と共有することができるため、クラウドによってそのスピードと質、また共有できる対象の数はさらに「拡張」し続けていると言えます。
さらに、「必要は発明の母」という言葉もあるように、歴史を通じて人間が作り出してきたすべてのテクノロジーは、私たちの必要を満たすという目的に寄与するものであり、佐藤氏は、そこには「パターン」が隠されていて、そのパターンさえ把握することで、今後のテクノロジーとそれに伴って政治や経済、社会がどのように動いていくか未来に先回りすることができると言います。
↑「人間の拡張」にパターンを見つけ出す
例えば、ITに関して言えば、これも突如として生み出されたわけではなく、電気の登場からコンピュータの発明、そしてコンピュータ同士をつなぐ手段として言わば必然的に生まれたのであり、その後に続くIoTやAIもその延長線上にあることを考えれば、それらの発展はひとつひとつの“点”ではなく、「人間の拡張」という“線”で結ばれているのです。
この視点時代を先取りし、「拡張」し続けるグローバルIT企業が地球上だけにとどまらず、宇宙を目指すのは必然的であり、グーグルは人工衛星を作っている宇宙ベンチャーのSkyBox社を5億ドル(約600億円)で買収しましたし、イーロン・マスク率いるSpaceXは、超小型衛星を700機打ち上げて、衛星インターネットを構築するという計画を持っており、ちなみに千数百機の衛星があれば、地表のすべての状況をリアルタイムで把握することができるようになると言います。
フェイスブックはすでに2013年に「Internet.org」を立ち上げ、インターネット環境のない50億人をネットにつなげるための世界的な共同体を目指していますが、2016年にはインターネット接続用無人機「Aquila」の初飛行、年内にサハラ以南のアフリカ上空にネット接続用衛星を打ち上げる計画であり、これもフェイスブックなりの“点”ではなく、一本の“線”の表し方なのでしょうが、このようにテクノロジーが「人間の拡張」であるという切り口から考えれば、グローバルなIT企業が目指す方向性が、少なくとも似通っていることは驚くにあたりません。
↑地球上に物理的に行けない場所がなくなった現在、次に人類が向かうのは宇宙
こうしたテクノロジーの変化こそが社会のあり方にも大きな影響を与え続けてきたことを歴史が証明しており、前述の佐藤氏はインターネットは近代に引かれた様々な境界を「溶かす」作用を持っていると指摘しています。(2)
例えば、近代において主にインフラを整備するのは国家の役割でしたが、現在では、それを企業が担い始めており、グーグルは世界中の人々が無料で知りたい情報にアクセスすることを可能にしました。さらにグーグルは、2002年に全世界の図書館の蔵書をすべて電子化するプロジェクトを立ち上げ、実際にそれを実現してしまいましたし、フェイスブックは12億人以上のユーザーアカウントを使って、戸籍謄本や身分証明書のような、今まで国家が担っていた役割を果たすようになってくることが予想されます。
↑近年では、国家の役割をIT企業が進んで行う
こうした国家と企業の境界が「溶け」始めている結果、企業の価値は今までのように財務表に現れる「資本」だけでは計ることができず、より公共性を帯びるようになってきており、2014年、フェイスブックは年商たった20億円しかないメッセンジャーアプリ「WhatsApp」を、2兆円で買収した理由も金銭的な数字だけではなく、彼らが抱える4億人のユーザーの数という実質に注目しないと見えてきません。
このようなテクノロジーを基軸にした未来に先回りする試みは、この時代を生きる羅針盤のような役割を果たしますが、未来を的確に予言するようなものではなく、佐藤氏もその点を次のように述べています。
「現実は人間が認知できないほどの膨大な要素に溢れ、かつそれらが互いに複雑に影響し合って、社会を進化させており、それをすべて把握することは、人間の脳というハードウェアの性能では、まず不可能。」(3)
↑買収額だけに注目してはいけない
AirbnbやDropboxのような1兆円規模のメガベンチャーへ出資する投資家であるポール・グレアムは、「どのスタートアップが大成功するかなんて誰にもわからない」と言いますが、皮肉なことに合理的にすべてを知ろうとするのではなく、将来の不確実性を謙虚に認めている彼が確かな収益を生み出していることは、多くの人が認める事実です。
アインシュタインも「現実の理解は実験に始まり、実験に終わる」と述べましたが、羅針盤を眺めているだけでは大海には出ていけず、ガイア理論と呼ぶかどうかは別として、自分なりの合理的な説明で自分を納得させたら、未来の不確実性を踏まえた上で意思決定を行い、海に乗り出していくしかない、これはイノベーターである以上、一生つきまとってくる宿命なのかもしれません。
引用:
(1)佐藤航陽「未来に先回りする思考法」(ディスカヴァー・トゥエンティワン、電子書籍版2015年)p242
(1)佐藤航陽「未来に先回りする思考法」(ディスカヴァー・トゥエンティワン、電子書籍版2015年)p912
(1)佐藤航陽「未来に先回りする思考法」(ディスカヴァー・トゥエンティワン、電子書籍版2015年)p22
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