(Photo by:go-sudo)
先日、テスラモーターズの創業者であるイーロン・マスクがロサンゼルスからニューヨークまでの完全自動運転が2年以内に可能になると述べて、大きな注目を集めましたが、人工知能の技術は「ディープ・ラーニング」という領域が開拓されたことで急激に成長し、すでに「掃除をする」、「将棋をする」というある特定の分野では、人間を上回り始めています。
もちろん、現段階の人工知能の技術は、人間の思考回路には到底及びませんが、金融市場ではすでに、コンピューターによる取引が人間による取引を上回り、英国デロイト社によれば、英国の仕事の35%が、今後20年間でロボットに置き換えられる可能性があると予想しています。(1)
↑人工知能「たった20年で35%の仕事を奪う」(Photo by:Michael Cordedda)
「ディープ・ラーニング」という技術は、人工知能が自身で概念を学習していくというものですが、たとえば、グーグルは人工知能に猫の画像を学習させることに成功するまでに、Youtubeにある猫の画像(Youtube)を1週間見せ続けたというように、時間的なコストが非常に大きいという問題点がありました。
しかし、グーグルが既存のコンピュータに比べて1億倍光速であると発表した「量子コンピュータ」の応用を検討しているように、現在ではこの問題の解決への道筋が見えてきています。
この「量子コンピュータ」とは、従来のコンピュータが1と0の組み合わせであらゆる情報を表していたのに対して、1であり0であるというような、同時に様々な「可能性」をもったまま存在することができる奇妙な量子のふるまいを応用したコンピュータで、例えば、従来のコンピュータで1兆個のスイッチが必要な計算も、量子スイッチでは40個で済むようになり、膨大な情報を必要とする「ディープ・ラーニング」に活用すれば、人工知能の開発は加速度的に早まっていくと見込まれています。
↑人工知能の活用はほんの少し前までは、ものすごくアナログだった(Photo by:Pat Loika)
通常、私たちは進歩の速度を来年には2倍、再来年には3倍という速度で考えますが、人工知能の場合、1年後には2倍ですが、2年後には4(2*2)倍、3年後には8(2*3)倍となり、10年後には1000倍、20年後には1000万倍、そして30年後には10億倍に達するため、2045年には人類全体の知性を人工知能が超えると予想されています。
進化の歴史をたどってみれば、地球の歴史は約46億年、生命が生まれたのが30?40億年前、直立二足歩行をする猿人が生まれたのが300?400万年前、農業が始まり文明ができはじめたのが5000年前、イギリスで産業革命が起こったの200年前、無線ができたのが100年前、コンピュータが生まれたのが60年前、パーソナルコンピュータとして汎用化されたのが30年前、インターネットが生まれたのが20年前、そしてiPhoneができたのが2007年で、今は一年に一度モデルチェンジする程度ですが、これが半年に一回、三ヶ月に一回、そして1日に一回というようにどんどん縮まっていき、いずれ人工知能は強い意識を持つようになるだろうと、現在、人工知能研究の世界的権威とも呼ばれる、レイ・カーツワイル氏は述べています。
↑レイ・カーツワイル「このままいけば、人工知能は2045年には人間に追いつく」(Photo by:null0)
人間の脳の構造は、基本的に電気回路と同じで、もし人間の思考が何らかの「計算」なのだとしたら、コンピュータで実現できないわけがなく、イギリスの数学者であり、コンピュータ学者でもあったアラン・チューリング氏は、計算可能なことはすべてコンピュータで実現可能だと述べました。(2)
そういった意味でも、グーグルやフェイスブックが人工知能に力を入れ、関連会社をどんどん買収していますが、人工知能が自分よりも賢い人工知能を作り、その人工知能がさらに賢い人工知能を作れば、人類自体が脅威におちいる可能性があり、イーロン・マスクは、グーグルの創業者ラリー・ペイジが人工知能ロボット軍団を率いて人類を滅亡に追いやるのではないかと、夜も眠れないほど心配だと述べています。(3)
↑ラリー・ペイジが人類を滅ぼすんじゃないかと夜も眠れない(Photo by:Heisenberg Media)
人工知能がもの凄いスピードで成長し、さらにごく一部の人がその知識を所有しているため、どうしてもネガティブな部分に焦点が当たってしまいますが、人工知能を搭載したロボットが人間の労働を肩代わりし、人間は個人個人の創造性を活かした自由な生活ができるかもしれないというポジティブな面も当然あります。
ロボットの語源は労働者という意味があるチェコ語のrobotaですが、人工知能が世の中に普及することでロボットと人間が強みを発揮しあうユートピアのような社会の実現が可能になろうとしていると訴えている専門家も多く存在します。
↑ロボットが単純で、退屈な作業をすべて肩代わりする可能性もある(Photo by:Oregon National Guard“)
そもそも、現代社会の仕事には創造性を発揮しにくいものが多く、企業、病院、そして大学などあらゆるところで、業務が細かく分化し、マニュアル化、合理化を徹底的に追求した官僚制という社会システムがみられます。社会学者のマックス・ウェーバーは、官僚制によって人間は感情を抑えながら仕事をしなければならず、次第に「化石化」し、人間が人間たるゆえんである創意工夫をこらす自己表現がなくなることで、マニュアルや上司に従うだけの受動的で心情のない人間が増えるのではないかと嘆いています。
↑ロボットが単純作業を代行することで、人間はもっとクリエイティブなことに時間を使える。(Photo by:Always Shooting)
ウェーバーのこの理念を引き継いで、社会学者のG・リッツァはこの現象を、あらゆる仕事がマクドナルドのようにマニュアル化したつまらないものになってしまっていると唱え、「社会のマクドナルド化」と呼びましたが、いつの間にか社会は感情の無いロボットのような人間を求めるようになってしまったのかもしれません。
映画「モダン・タイムス」では、チャップリン扮する労働者が巨大な歯車の間にはさまれているというシーンに象徴されるような、工場で働く従業員にやりがいなどなく、非人間化してしまった様子を鋭く風刺しましたが、人工知能が現代社会の非人間化した労働を代替することによって、人間は再び感情豊かな人間らしい性格を取り戻し、マニュアルによって抑圧されてきた創造性を自由に発揮できるようになっていくことも十分に考えられます。(4)(5)
↑いくら頑張ってもやり甲斐が生み出せない仕事を人工知能が代行する(Photo by:Rennett Stowe)
多くの人が人工知能が人間よりも秀でる2045年問題に不安を感じるようになったのは、オックスフォード大学の研究で、米国の47%の仕事が人工知能で代替可能だと発表したことが発端でした。
しかしながら、レイ・カーツワイルは、1900年には人々の30%が工場で働いていたけれど、オートメーション化によって2012年には工場で働く人々は9%になったことを指摘し、これは失業を生むという現象ではなく、職業能力の一番低い職業をロボットが代替したことで、より自己実現の欲求を満たせる職業が新しく生み出されることだと示し、私たちは、満足が得られる行為に多くの時間を費やすことができるようになっていると述べています。
↑2045年には今よりもっと自分の時間を持てるかもしれない (Photo by:Dick Thomas Johnson)
恐らく人工知能に関しては、それを開発する人の考え方によって、人類に与える影響が大きく異なってくることでしょう。人間に脅威を及ぼすものなのか、人間に自由を与えるものなのか、それともドラえもんや鉄腕アトムのように共存していくものなのかは分かりませんが、グーグルやフェイスブックの考え方だけではなく、日本人には日本人なりの人工知能に対する答えがあるはずです。
1.松尾 豊「人工知能は人間を超えるか」(KADOKAWA / 中経出版、2015年) Kindle P234、P297
2.松尾 豊「人工知能は人間を超えるか」(KADOKAWA / 中経出版、2015年) Kindle P414
3.アシュリー・バンス「イーロン・マスク 未来を創る男」(講談社、2015年) Kindle P79
4.森下 伸也「社会学がわかる事典―読みこなし使いこなし活用自在」(日本実業出版社、2000年) P94?95
5.長谷川 公一、浜 日出夫、藤村 正之、町村 敬志「社会学」(有斐閣、2007年) P107~108
本ブログは、Git / Subversionのクラウド型ホスティングサービス「tracpath(トラックパス)」を提供している株式会社オープングルーヴが運営しています。
エンタープライズ向け Git / Subversion 導入や DevOps による開発の効率化を検討している法人様必見!
「tracpath(トラックパス)」は、企業内の情報システム部門や、ソフトウェア開発・アプリケーション開発チームに対して、開発の効率化を支援し、品質向上を実現します。
さらに、システム運用の効率化・自動化支援サービスも提供しています。
”つくる情熱を支えるサービス”を提供し、まるで専属のインフラエンジニアのように、あなたのチームを支えていきます。
No Comments