(Photo by:Ken Banks)
資本主義最後のフロンティアの言われるアフリカ。大虐殺の国ルワンダが「アフリカのシンガポール」を目指し、10億人の大市場、豊富な地下資源、そこでは携帯電話(スマホ)による新生アフリカが見えます。
ルワンダのポール・カガメ大統領は、今から8年前に、「かつて贅沢と特権の象徴であった携帯電話は今やアフリカの必需品になった」と述べましたが、高価なPCに頼れないことでモバイルに強い人々を生み出したアフリカは、今、「携帯大陸」を越えて「スマホ大陸」に移り変わろうとしています。
そもそも、アフリカに携帯電話が広まったのは、広大なサバンナや熱帯雨林が広がる地理的環境、定住しない人々の身軽なライフスタイル、そして、安定した電源と回線が供給されないインフラの状況などが背景にありますが、
同時に、アフリカには識字率が30%の国もあり、文字を使うコミュニケーションの進歩が難しいのに対して、音声通話でコミュニケーションが取れる携帯電話が普及しやすかったということもあるようです。
実際に、アフリカでは、デスクトップでインターネットにアクセスする人々はわずか6%に過ぎない一方で、携帯電話の契約者数は増え続け、2000年から2010の10年間で500倍に増加したという見方もあります。
↑携帯を持つ人は10年で500倍に増えた。(Photo by:Erik (HASH) Hersman)
携帯電話が普及するにつれて、ケニアで始まった電子マネーシステム「M-PESA」(「M」はモバイルの意味、「PESA」はスワヒリ語でお金の意味)など、アフリカ独特の携帯電話のサービスが始まり、こうしたサービスによってアフリカにモバイル社会が作り出されました。
M-PESAは、ショートメッセージに特化したマネーサービスで、読み書きや、銀行への物理的なアクセスなどの問題を取り除くことで、ケニア人全てに対して、お金の管理や取引を可能にしました。
↑銀行の口座がなくても、お金のやり取りが可能になった。(Photo by:Allissa Richardson)
一日に「M-PESA」で取引されている金額は、およそ2500万ドルで、これはケニアのGDPの40%にものぼると言われており、ジャーナリストのトビー・シャプシャクも、2013年にTEDで講演した際に、次のように述べました。
「アフリカはモバイルオンリーの大陸であり、モバイルが接触できなかった人々の交流を可能にし、銀行口座を持っていない人々に遺産問題の解決策やビジネスの展望を持たせることを可能にした」
↑電子機器ひとつで数多くの問題を解決する。(Photo by:CIAT)
モバイル社会になったアフリカでは、数年前から携帯電話を使っていた人たちがどんどんスマホに移行しており、ケニアの通信業者safaricom社によれば、2014年にケニアで販売される携帯電話のうち、67%がスマートフォンで、南アフリカでは18歳から34歳の年齢層の41%が自分のスマホを所有しているとのことです。
さらに、アフリカ人のためのスマホとして、2013年にはアフリカの会社によって設計されたスマートフォンが、170米ドルで発売され、アフリカならではのさまざまなサービスも次々と誕生し、アフリカのスマホ社会は確実に変わりつつあります。
↑携帯社会からスマホ社会へ。(Photo by:Michael Pollak)
経済面では、アフリカの65%が農民で、農業が多くの人々の生活を支えていますが、スマホはアフリカの農業の効率も大きく向上させました。
2011年にケニアでサービスが開始されたiCowというモバイルアプリケーションは、牛の妊娠や飼育に関する情報を受信することができ、スケジュール管理なども効率良く行えるため、このアプリを利用した25,000人の農家のうち3分の1以上の収入が二倍になったと報告されています。
また、このiCowで、農家の人々は鶏、ヤギ、そして、ヒツジなどの家畜の売買情報をやりとりをしたり、音声サービスによって発育や栄養に関するアドバイスも得ることができるそうで、ケニアのある農家の牛はアプリを利用する以前に比べて倍以上のミルクを出すようになったと述べています。
↑アプリは仕事の生産性を大きく向上させる。(Photo by:US Army Africa)
WHO(世界保健機構)は発展途上国で供給される薬の約30%が偽物であると見積もっており、もちろん、アフリカでもそれは例外ではありません。
2009年に、処方された歯の治療薬によって100人近くの乳幼児が死亡したことをきっかけに、ガーナでは薬にコードを付け、それを削ってショートメッセージの番号に送信することによって、薬が正規のものなのかを確認できるサービスが始まりました。
また、これまで多くの乳幼児が出生登録されることなく死亡していますが、現在は携帯電話を使って出生登録が行えるようになり、具体的な保険政策もスタートしています。
↑モバイルはアフリカの医療水準の向上にも貢献している。(Photo by:US Army Africa)
スマホによってアフリカの子供や若者の生活は圧倒的な速さで近代化し、宗教や種族などバラバラだったアフリカ人を団結させつつあります。
Siyavulaは、無料で著作権フリーの教科書をPDF化して南アフリカ初のメッセージングアプリMXit上で閲覧できるサービスを始め、2012年に高校生の数学と理科の教科書を載せたところ、たった2ヶ月で20万人のユーザー数を獲得しました。
エンターテイメントの分野でも、「あなたのポケットにアフリカの映画を!」をキャッチコピーにしたAfrinollyなど、アフリカの映画ばかりを集めたモバイルアプリなどが登場し、アフリカの音楽や映画のダウンロードサービスは現在、巨大産業になりつつあります。
↑スマホが宗教や種族を超えて団結させつつある。(Photo by:Japanexperterna.se)
ヨハネスブルグ出身のジャーナリスト、トビー・シャプシャクは、発明とはずばり問題解決術で、アフリカには厄介で深刻な問題が山ほどあり、それらを解決するしかないため、アフリカでは「真の発明」が生み出される可能性があると説明しています。
「つながることは、人間の権利だと信じている」とマーク・ザッカーバーグも述べていますが、アフリカ人がスマホでつながり、一体となって問題を解決することによって、先進国によって壊されてしまったアフリカ人の人権が、再び「スマホ大陸」という流れの中で形作られる日は近いのかもしれません。
参考:
NHKスペシャル:アフリカンドリーム 第1回 “悲劇の国”が奇跡を起こす
本ブログは、Git / Subversionのクラウド型ホスティングサービス「tracpath(トラックパス)」を提供している株式会社オープングルーヴが運営しています。
エンタープライズ向け Git / Subversion 導入や DevOps による開発の効率化を検討している法人様必見!
「tracpath(トラックパス)」は、企業内の情報システム部門や、ソフトウェア開発・アプリケーション開発チームに対して、開発の効率化を支援し、品質向上を実現します。
さらに、システム運用の効率化・自動化支援サービスも提供しています。
”つくる情熱を支えるサービス”を提供し、まるで専属のインフラエンジニアのように、あなたのチームを支えていきます。
No Comments