(Photo by:Nick Macphee)
日本では、授業といえば講義を受けることが主体となっていますが、ある調査では、生徒は講義時間の40%は教授の言ったことを聞いておらず、さらに最初の10分では講義の70%を記憶していても、最後の10分では20%しか記憶をしていないということがわかっており、ただ講義を受けるだけでは知識を身につけるのに十分ではないことが分かります。
受験大国日本では、大学に入ってしまうと、授業外で勉強する意義を見失うことが多く、東京大学 経営政策研究センターが、日米の大学生の授業時間外の勉強時間を比較した調査においても、アメリカの大学生では週に11時間以上勉強している人が58.4%だったのに対して、日本の大学生では14.8%にとどまり、さらに日本の大学生の約10%は勉強時間が1時間にも満たないことが明らかになりました。
↑大学で大きな差がつく、日本とアメリカ。(Photo by:Francisco Osorio)
近年、日本のこういった学習のあり方を変えようという動きが進められており、授業において講義をただ座って聞くだけの形式から、生徒が能動的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」が提唱され、グループディスカッションや実験などに焦点を移すことの意義が説かれています。
アクティブ・ラーニングは、1993年にイギリスの教育機関Council for National Academic Awardsの学習向上プロジェクトによって提案された学習システムで、従来型の授業を聞き取って内容を暗記するといったような「表面上の学習」から離れて、「体験を通じての学習」を核とし、「何を教えるか」という教師の視点よりも、「どのように学ぶか」という生徒の視点で授業を行います。
↑21世紀に入り、世の中で必要とされるスキルも大きく変わり始めている。(Photo by:(By:woodleywonderworks)
このアクティブ・ラーニングを提唱した、物理学者でハーバード大学教授でもあるエリック・マズール氏は、「Peer Instruction (生徒同士による指導)」といって、生徒間のディスカッションやディベート、そしてグループワークをおこなうことで、生徒がより効率よく勉強できると述べています。
「Peer Instruction」とは、授業時間にディスカッションやディベートをして学びを深めるもので、そういった授業をするためには学生は予習をしなければならず、さらに討論する課題について、昔から知っている教授よりも、知らない状態から今「わかった」状態に変わった生徒から解説を受けることで、難しいポイントを理解することが易しくなり、家庭学習においても授業中においても、学習意欲を維持し続けることができます。
↑教授から教わるよりも、今「わかった」状態に変わった生徒から学ぶ方が効率が良い。(Photo by: University of the Fraser Valley)
ワシントン大学のスコット・フリーマン教授が、講師と教科書を同一にして、大学生のクラスを無差別に2つのグループに分け、従来の聞き取り式の講義と、アクティブ・ラーニングの授業における学習成果の違いを調査したところ、従来の聞き取り式の授業をとったグループの方が1.5倍の確率で落第する可能性があり、さらにアクティブラーニングを行ったグループの方が、試験でより良い成績を残したと発表しました。
また、フリーマン教授は、アクティブ・ラーニングは、特に科学、技術、工学、そして、数学の分野において効果を発揮すると述べ、生徒同士で教え合って高め合う、アクティブ・ラーニングのような学び方をすることで、こういった分野で全体の20%しかいない女性や移民の落第率を下げることができるだろうと語ります。
↑聞き取り式の授業はアクティブ・ラーニングと比べて落第率が1.5倍(Photo by:Jirka Matousek)
アクティブ・ラーニングが、受動的でなく能動的な学習方法であることに注目をしている研究者は多く、シカゴ大学で人間の脳と身体の繋がりについて研究を行っている、シアン・ベイロック博士は、実験や身体を使って物事を学ぶ方が、脳での情報の伝達がより効率的に行なわれ、知識として記憶に残りやすいと、以下のように述べています。
「日常の様々な場面で、私たちの身体を “学びの一部”とすることができれば、私たちはより効率的に学ぶことができる。」
↑時代によって、求められるものが変われば、それを学ぶ方法も大きく変化させていく必要がある。(Photo by:flirianders)
アクティブ・ラーニングが普及していく中で、積極的な学びをサポートするには、生徒同士の交流の場を提供する施設が必要となり、マサチューセッツの「本のない図書館(Bookless Library)」というプロジェクトなど、グループ勉強室や様々なオンライン文献を無料で利用できるような図書館が増えてきています。
これまでは「本を読む場所」という受身の学習の場であった図書館も、これからは「学びのハブ」として、個人と本がつながる空間から、学習者と学習者をつなげる空間としての需要が高まっていくかもしれません。
メディアと学びの関係など、多くの著書を書いているスティーブ・ジョンソン氏は、Ted Talkで、アイディアは瞬間的に「ひらめく」ものではなく、実は長期的に積み重ねられた知識によって発見されるものであると述べていますが、アクティブ・ラーニングを通じて学生が確実に知識を積み重ねるようになれば、斬新なアイディアやひらめきを生み出す土台も、自然と作られていくのではないでしょうか。
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