(Photo by:Dani Lurie)
世界最速のスーパーコンピューターは、今年6月の時点で、中国の国防科学大学が開発した「天河2」で、計算速度は毎秒33.86ペタフロップを記録し、米国オークリッジ国立研究所の「タイタン」が世界第2位となりました。
2年連続で中国に首位を奪われ、オバマ米大統領は、世界最速のスーパーコンピューターの開発をに向けた「国家戦略コンピューティング・イニシアチブ」の大統領令に署名し、10年後の2025年ま でに現在の約30倍の計算能力を持つ、「エクサ級」のスーパーコンピューターでの首位奪還を目指すことを表明しました。
↑科学技術で遅れを取ったアメリカは、新たなコンピューターで首位奪還を目指す (Photo by:John Althouse Cohen)
1ぺタフロップの1000倍の速度を持つエクサ級のスーパーコンピューターの開発が現実視される中、コンピュータがさらに「脳」に近づくことが期待され、脳をテーマとした大規模なプロジェクトが、世界中でどんどん立ち上げられています。
脳のネットワークの全体像解明を目指すことが骨子としたBRAINイニシアチブ(Brain Research through Advancing Innovative Neurotechnologies Initiative) は、企業や民間研究所が共同で進めている米国の国家プロジェクトで、主導団体のひとつである米国立衛生研究所(NIH)のニコラス・フランシス所長は、BRAINイニシアチブは、「アポロ計画」に匹敵する国家プロジェクトだと述べています。
↑スーパーコンピューターを作ることは21世紀のアポロ計画 (Photo by:NASA on The Commons)
オバマ大統領は2013年の一般教書演説で、BRAINイニシアチブの構想を発表した際に、同じく国家規模のプロジェクトであったヒトゲノム計画について、「1ドルの投資から140ドルの投資収益が得られた」として、その成果を強調し、BRAINイニシアチブに於いても同様の成果が期待できると述べています。
ヨーロッパでも、スイス連邦工科大学のヘンリー・マークラム教授が指揮を執るThe Human Brain Projectは、欧州を中心に80以上の研究機関が参加し、人間の脳の機能をスーパーコンピューターでシミュレートできるようにすることを目指しています。
このプロジェクトによって、これまでは限られたデータや、仮説に頼っていた脳神経の機能に障害が起きる原因が解明され、新薬が開発されれば、ヨーロッパでは心臓病と糖尿病を合わせた数よりも、遥かに多い数の患者を救うことができると期待されています。
↑将来性の高い技術投資は、1ドルが140ドルにもなる(Photo by:Steve Jurvetson)
そういったプロジェクトによって、脳の可視化が進み、人の思考や心が客観的に見えるようになりつつあります。
情報を伝達するニューロンには、それぞれに10,000のコネクションがあると言われ、そのコネクションの数は 脳全体で100兆にも及ぶことから、脳全体では天文学的な数の電気信号がありそうですが、専門家はある特定のものに対する電気信号の形を「ブレインマップ」に表しています。
マークラム教授は、「ブレインマップ」は簡潔にいうと熱帯雨林の樹木のカタログ化のようなものだと例え、熱帯雨林の一部に、どの種類の樹木がどれだけあるのか、それぞれの樹木の形や生息地をマークするようにして作り上げると述べています。
↑特別な電気信号が人の思考を客観的に見えるようにする(Photo by:Jason Snyder)
イメージごとに特異性があり、顔、アニメ、そして建物や風景など、物体によって、刺激に反応する脳の部分がわかれていて、そのマップを再現して、ある人の脳のイメージを別の人の知覚空間に映し出すことも不可能ではありません。
ブレインマップの研究が進めば、驚異的な記憶力をもち、見たまま聞いたままに再現ができるサヴァン症候群や、数字や文字に色が見える共感覚保持者など、人口の数%しか存在しない特別な能力を持つ人々の脳の機能の解明が進んだり、自閉症や脳性まひなどで、インプットはできてもアウトプットが難しい人々に、新たな可能性が生まれることも考えられます。
また、映画「SELF/LESS」は、末期ガンを告知を受けた大富豪の脳の記録が、「VESSEL(器)」と呼ばれる新しい健康な身体に移植され、生まれ変わって生き続けるストーリーですが、個人単位で脳の全データがコンピューターに記録されて、個人の体験や記憶を別の人物が体験したり、 コンピューターに保存された脳の記録により、ある人物が死後に、「脳の記録」として蘇るサイエンスフィクションのような話も現実になりうるのではないでしょうか。
↑新しい分野の研究によって、人類史は次のフレーズに向かう(Photo by:woodleywonderworks)
人工知能が人を超える2045年問題なども唱えられていますが、その前に、人の脳を人工的に操作するという取り組みが始まり、人の知能と人工知能の境目はどんどんあいまいになっていくかもしれません。
脳内に蓄積されている過去の数々の経験と、今まさに発生している感覚が相互作用して、 思考を生み出し、「自己」を成していて、もしもそれがコンピューターにデータとしてバックアップされ、再現できるようになったとしたら…。
スーパーコンピュータの発展とともに脳機能の全容が明らかになって、「ヒトブレインマップ」が公開されるとき、私たちの「自己」を形成しているものは、自分の脳内で繰り広げられる電気信号や化学物質のやり取りだということが常識となり、かつてフランスの哲学者 ルネ・デカルトが提唱した有名な命題、「我思う、故に我あり」にも一石を投じることになるでしょう。
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