2016年1月30日、米オバマ大統領は全ての子どもたちにコンピューターサイエンスを学ぶ機会を与えようと、幼稚園児から高校生までを対象に、40億ドルを州の予算に組み込むと発表しました。
これはアメリカに限った動きではなく、イギリスやフィンランドなどヨーロッパでもプログラミングを義務教育に取り入れる国が出てきています。
日本でもプログラミングを義務教育にしようという動きが見られ、Scratchtやロボチャートといった、パズルを組み立てるように視覚的にプログラミングが行えるソフトを使って学習を始めている学校が既に登場してきており、近い将来、誰もがある程度のプログラミングを行えるようになる日が来るかもしれません。
↑プログラミングはもう音楽や図工のような義務教育と同じ
こうした動きは、今のIT産業を底上げすることで、小規模かつ少額でビジネスをスタートさせ、ユーザーの反応や意見を聞きながら、規模を調節していくボトムアップ型のビジネスをますます活性化させることになるでしょう。
スタートアップビジネスに資金提供する企業も多く、例えばシリコンバレーにあるYコンビネーターは、プログラミング技術とアイデアを持った若者を支援することで有名で、AirbnbやDropboxなど日本でもよく聞かれるようになった企業を輩出していますが、アイデアさえあれば少額の資金で起業することができるため、あと起業に必要なのは、やる気と忍耐力だけということになります。
↑スタートアップは起業した後に、地獄の日々が待っている
総務省がまとめた平成25年版情報通信白書によると、2011年から2013年5月の間に東証マザーズに上場した企業のうち、ITベンチャーが占める割合は全体の37%にも上るそうです。
日本でもREADYFORやCAMPFIREなどのクラウドファンディングサービスの登場により、知名度が低いクリエイターや起業家でも資金を集めることができるようになりましたし、クラウドソーシングを使って必要なスキルを持った人材を見つけやすくなったことも考慮すれば、起業や新しいサービスを作るために、必要なものはどんどん少なくなってきていることは間違いありません。
↑必要なのは、働かずにはいられないほどの情熱。
斬新なアイデアと、それを形にするプログラミングのスキルがあれば、簡単に起業できるようになりましたが、半分近くの企業が3〜4年で消え、10年以上存続する企業でさえ珍しくなってきました。
実際、スタートアップが盛んなアメリカにおいても、約9割の企業が失敗しているそうで、その失敗の原因のおよそ4割が市場ニーズがなかったことを挙げているほか、3割が資金不足、2割がプロジェクトを立ち上げた仲間が原因であることが指摘されています。
Yコンビネーターを立ち上げたポール・グレアムによると、成功する企業家に必要な資質は5つあり、「スタミナ、貧乏、根無し草性、仲間、無知」だそうで、グレアムは、企業家に対して「無知」という挑戦的な言葉を選んだことについて、次のように述べています。
「スタートアップにまつわる苦難を知っていたならば、誰も創業者にはならないだろう。」(1)
↑スタートアップを始めたら「寝る・運動・食事」以外は、すべて仕事
今では、部屋を貸したいという登録物件数はおよそ世界190ヵ国34,000都市の約200万件におよび、世界で6,000万人以上の利用者を出しているAirbnbも(2016年4月時点)、資金難に苦しみぬいたスタートアップの一つです。
Airbnbは、ジョー・ゲビア、ブライアン・チェスキー、ネイサン・ブレチャージクの3人によって創業されましたが、Yコンビネーターの投資家に認められて資金調達に成功する前は、クレジットカードを30~40枚ほど使いまわして生活し、精神的に追い詰められ、ブライアンにいたっては約9キロも痩せてしまったそうです。
毎朝、心臓がバクバクした状態で目を覚まし、危機的な状況を抜け出す方法を一日中考えるも思いつかず、寝る前にベッドの中で物事は全てうまく運ぶようにできているんだと自分に言い聞かせる毎日だったと当時を振り返っています。(2)
↑眠れぬ夜を過ごしたのは、ザッカーバーグもジョブズもみんな同じ
シリコンバレー有数の大型ベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツの共同創業者で、ゼネラル・パートナーでもあるベン・ホロウィッツは、自身の起業体験を振り返り、企業のCEOとしてもっとも困難なスキルは、「自分自身の心理コントロール」だと述べています。
CEO自身の心の問題よりも、会社の組織や業務のための実務、採用と解雇などの人員整理の問題のほうが大きく捉えられがちですが、CEO自身の心理コントロールに比べれば、比較的シンプルな課題と言えると言います。
↑スタートアップのCEOは、日々心理がボロボロになる
ベン・ホロウィッツはウェブブラウザのMosaic(モザイク)を開発したマーク・アンドリーセンとともにネットスケープやラウドクラウド、オプスウェアという会社を起ち上げますが、2000年3月に起こったドットコム・バブルの崩壊に遭い、一時は新たな経済の前触れだとまで歓待されたドットコム企業は、ピーク時のおよそ80%も株価を落としてしまいます。
オプスウェアも例外ではなく、35ドルまで株価を落とし、3回の人員整理で計400名の社員を失ったほか、倒産寸前までいったことも何度となくあったそうですが、最終的に16億ドルでHPに売却するまで回復することができました。
↑ピークの80%まで株価が落ち、計400名の社員を失った
彼は「成功するCEOの秘訣は何か」とよく聞かれるそうですが、絶対的な秘訣はないそうで、一つだけ確実に言えることがあるとすれば、「良い手がないときに集中して最善の手を打つ能力」を身につけることで、逃げたり死んだりしてしまいたいと思う瞬間こそ、CEOとしての最大の違いを見せられるかにかかっているそうです。(3)
起業をすれば誰しも、「収益をあげなければ、スケールアップしなければ・・・」と焦るかもしれませんが、Airbnbの創業者ブライアン・チェスキーは、Yコンビネーターのポール・グレアムから、「ユーザーに直接会いに行きなさい」と言われ、助言に従って当時一番ユーザー数が多かったニューヨークに赴き、焦りを横において、ニューヨークのおよそ20人のユーザー全てに会って、実際ユーザーがどのようにサービスを使っているかを目の当たりにしました。
↑良い手がないときに集中して最善の手を打つ能力
たとえば、多くのユーザーが携帯カメラで家の様子を撮影しており、当時の携帯カメラの解像度は現在ほど良くありませんでした。ページに記載されている写真はとても暗かったことに気がついたブライアンとジョーは、RISD(ロード・アイランド・スクール・オブ・デザイン)に通っていた友人に5,000ドルもするカメラを借り、自分たちでホストの家を回り、撮影させてもらったそうです。(4)
↑数日後、ニューヨークの売上だけがどんどん伸び始めた
会社経営の本当の困難は、簡単な答えが見つからない部分にあり、ベン・ホロウィッツはCEO時代、苦しみを味わっているのは自分だけのように感じており、他社のCEOがみな自信に溢れ、すべてを掌握しているように見えたそうですが、「絶好調」のように見えた多くの会社が倒産し、あるいは二束三文で買収されるのを何度も見ているうちに、苦闘しているのは自分だけではないと気がついたそうです。
困難に直面した時に何をすべきかは、私たち自身が最終的に判断するしかありませんが、自分自身が選んだ夢を実現するためには、苦闘すらも愛し、自分の判断を信じ、その時最良と思うことをやり続けることができる意志の強さなのかもしれません。(5)
参考書籍)
1. ランダル・ストロス「Yコンビネーター」(日経BP社、2013)Kindle
2. Jack Chang「airbnb 僕らは”シリアル”起業家: We Are Cereal Entrepreneurs」(Amazon Services International, Inc.、2015)Kindle
3. ベン・ホロウィッツ「HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか」(日経BP社 、2015)Kindle
4. Jack Chang「airbnb 僕らは”シリアル”起業家: We Are Cereal Entrepreneurs」(Amazon Services International, Inc.、2015)Kindle
5. ベン・ホロウィッツ「HARD THINGS 答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか」(日経BP社 、2015)Kindle
本ブログは、Git / Subversionのクラウド型ホスティングサービス「tracpath(トラックパス)」を提供している株式会社オープングルーヴが運営しています。
エンタープライズ向け Git / Subversion 導入や DevOps による開発の効率化を検討している法人様必見!
「tracpath(トラックパス)」は、企業内の情報システム部門や、ソフトウェア開発・アプリケーション開発チームに対して、開発の効率化を支援し、品質向上を実現します。
さらに、システム運用の効率化・自動化支援サービスも提供しています。
”つくる情熱を支えるサービス”を提供し、まるで専属のインフラエンジニアのように、あなたのチームを支えていきます。
No Comments