(Photo by:Creative Tools)
オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン博士は、論文「未来の雇用」の中で、「今後10~20年でアメリカの雇用者数の47%の仕事がコンピュータ化されるリスクが高い」と発表しましたが、その数字に大きく貢献しているものが、3Dプリンターの技術の進歩です。
様々なものを立体に複写できるようにになり、3Dプリンターは今や業種も公私も関係なく、あらゆる分野のモノづくりに革命を起こしています。
↑3Dプリンターは人間の仕事を徐々に奪っていく。(Photo by:Michael Coghlan)
たとえば、3Dプリンターが個人のものになるほど、私たちはモノではなく、デザインを購入するようになり、壊れたモノの部品を買いに行くよりも早く、自宅の3Dプリンターで部品を作って簡単に修理できるようになります。
店舗は全てショールームのようになり、在庫を抱えることも、物流にコストがかかることもなくなるため、西村拓紀デザイン株式会社、代表取締役の西村拓紀氏も、3Dプリンターがお店の役割をも変えると、以下のように述べています。
「3Dプリンターが普及することによって、僕たちはお店で商品そのものではなくデータをダウンロードするようになるでしょう。店舗はモデルの商品を飾っているアンテナショップのような役割を果たし、お客さんはモノではなくデータを買うのです。こうした買い物のスタイルでは、お客さんは荷物を持ち運ぶ手間が省けるだけではなく、商品のサイズやカラーを自由に調整したり、商品に自分の名前を入れたりするといったカスタマイズが極めて容易にできます。」
↑商品そのものではなく、データを購入することになる。(Photo by:MKzero)
カスタマイズが強みになる分野での3Dプリンターの活用は急速に進んでおり、カナダ、バンクーバー発のWiivv Wearables Inc. (ウィーブ ウェアブル)という会社では、3Dプリンターを使うことによって、カスタマイズされた靴のインソールをより良心的な値段で提供することに成功しました。
通常は何ヶ月もかかり、店舗なしでは不可能だったプロセスを、自分のスマートフォンで撮った足の写真を数枚送るだけで、自分だけに合ったインソールをすぐに作れるという手軽さとスピードも人気の要因です。
3Dプリントのソフトウェアを手がけるDigital Forming社のCEO、リサ・ハルーニ氏は、TED トークで、「3Dプリンターのテクノロジーのすごいところは、オーダーメイド製品を大量生産できることです。規模の経済はほとんど関係ありません。特注製品が容易に作れるようになりました 。」と3Dプリンターの魅力と合理性を紹介しました。
↑足の写真を送るだけで自分にぴったりなインソールを購入できる。(Photo by:sabianmaggy)
精巧にカスタマイズして立体を複写できる3Dプリンターは、一つ一つのモノがどんなに複雑であっても関係なく、複雑なものが組み合わされた壮大なスケールのプロジェクトにも採用されており、バルセロナに建築中のユネスコ世界遺産、サグラダ・ファミリアでも、2001年から3Dプリンターの技術が取り入られています。
サグラダ・ファミリアは、1882年から建設が始められ、壮大かつ微細な造りのため、かつては着工から完成まで300年はかかると予想されていましたが、3DプリンターとCNC(コンピューター数値制御)の石材加工機の活用により、ガウディ没後100周年目の2026年に完成予定となっており、工期が150年以上も短縮されたことになります。
↑3Dプリンターの発展が工期を150年以上短縮した。(Photo by:slettvet)
3Dプリンターの技術は、カスタマイズ、生産性、そして流通において、これまでに考えられなかった規模での合理化が可能で、この技術によって仕事が奪われることを心配する声も聞こえますが、時代の流れによって今の常識が移り変わることは必然で、実業家の堀江貴文氏も、近畿大学でのスピーチで、以下のように伝えています。
「今みなさんが常識だと思っていることは、例えば20年前は常識ではなかったこともたくさんある。常識とか、道徳とか、倫理とか、こういったものっていうのは、5年・10年単位で簡単に書き換わります。」
↑常識など数年単位に書き換わる。(Photo by:fdecomite)
医療分野でも、3Dプリンターによる新たな治療法が進められており、再生医療の第一人者アンソニー・アタラ博士は、患者自身の細胞を使った臓器を3Dプリンターで作り、移植する事に成功ました。
3Dプリンターの技術は、臓器を断層的に見て作り出された3次元イメージから患者に合わせてデザインされた臓器を、インクの代わりに 細胞を使ってプリントすることを可能にし、臓器不足や臓器の適合などを気にすることなく、どんな患者であっても必要な臓器を作って移植することが可能になりつつあります。
ごく小さな切手の半分くらいの大きさの組織から臓器をつくる。(Photo by:Steve Jurvetson)
この移植を受けた最初の一人で、10歳のときに腎不全と診断されたルーク君は、別人のように生きられるようになった感動を次のように語っています。
「ベッドから出るのも大変なほどひどい病気で、学校もなかなか行けず、本当に惨めでした 。一生透析を続けることになっていて、自分の人生が今後どうなるのか考えたくもありませんでした。この手術の後、僕の人生はずっと良くなりました。いろんなことができるようになり、高校ではレスリングをやりました。チームのキャプテンになって最高でした。膀胱を作るのに使われたのは、僕自身の細胞なので体によく馴染んでいます。僕は人生を生きていける準備ができたのです。」
↑3Dプリンターが様々な分野で活躍し始める。(Photo by:UCL Engineering)
イギリスでは、3Dプリンターは、未来にイノベーションを起こすものとして、すべての小学校に導入することが進められていますが、すでに導入されているシリコンバレーの学校の教員は、「導入に当たって教師を教育する費用を予算に入れることを忘れないように!」と指摘しています。
3Dプリンターによって、自分で銃を作り出すこともできれば、命を救う事も出来る時代の始まりを生きている私たちは、3Dプリンターのビジネスの可能性だけでなく、すべての人々が3Dプリンターを使う目的を考え、判断し、舵取りをしていくような未来づくりについても、考えていかなくてはなりません。
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