はじめに
現在、AWS(Amazon Web Service)やさくらVPS(Virtual Private Server)を始めとするサービスの登場によって、仮想サーバーを個人や会社で気軽に利用できるようになっています。これらのサービスでは、サーバーやクラウド上に作成された複数の仮想マシンをユーザーに対してレンタルしており、ユーザーは自分専用のサーバーとして利用しています。これまでのレンタルサーバとは異なり、仮想マシンを丸ごとレンタルできるため、多くのユーザーに支持されています。これらのサービスを実現するために不可欠なのが、今回解説するハードウエア仮想化です。ここでは、情報システムのアウトソーシングおよび、情報システムのリニューアルを検討している企業の担当者を対象に、ハードウエア仮想化について紹介します。
ハードウエア仮想化とは
物理マシン上で、複数の論理マシン(仮想マシン)を実行するためには、ソフトウエア仮想化とハードウエア仮想化の二種類に大別されています。大きな違いは、ソフトウエア仮想化が、ホストOSと呼ばれる物理マシン上にインストールされたOS上でオフィス製品などと同様にアプリケーションとして仮想化ソフトウエアを実行するのに対し、ハードウエア仮想化は、物理マシンに仮想化に特化した専用OSをインストールすることで、仮想マシンを実行します。このように、ハードウエア仮想化は、仮想化専用の物理マシンとなるため、ソフトウエア仮想化のように他のアプリケーションを実行することはできません。しかし、ハードウエア仮想化は、仮想化ソフトウエアを必要としないため、ソフトウエア仮想化に比べて仮想マシンのディスクI/Oやネットワークアクセスなどのパフォーマンスを向上させることができます。近年では、 Intel VT-d(Intel Virtualization Technology)やAMD-Vi(AMD Virtualization)のようにハードウエアレベルの仮想化支援技術が利用できるため、ハードウエア仮想化を利用しやすい環境が整っています。
代表的なハードウエア仮想化ソフトウエア
代表的なハードウエア仮想化ソフトウエアとして、VMware vSphere Hypervisorおよび、Microsoft Hyper-V Serverが上げられます。VMware vSphere Hypervisorは、2009年に発表されたVMware ESXi 4.0をベースにアップデートされた製品であり、最も利用されてる仮想化ソフトウエアと言えます。対して、Microsoft Hyper-V Serverは、Microsoft Virtualization Serverとして発表されていた製品であり、Windows Server 2008(64bit版)でバージョン1が搭載され、Windows Server 2012では、Hyper-V バージョン3が搭載されています。Windows Vista以降に搭載されたWindows XPモードは、Hyper-Vの前身となったVirtual PCを元に開発されており、Windows 7以降は、ソフトウエア仮想化機能としてクライアントHyer-Vが利用できるようになっています。どちらの製品も無償公開されており、製品サイトからダウンロードして利用することができます。ただし、VMware vSphere Hypervisorを利用するためには、My VMwareへの登録が必須になります。
ハードウエア仮想化のポイント
ハードウエア仮想化を実現するためには、ハードウエア要件および、仮想マシンが対応するゲストOS(ソフトウエア要件)の確認がポイントになります。特にハードウエア要件は、VMwareやMicrosoftなどのメーカー認定のハードウエアのみにインストールできるため、事前にハードウエア要件を確認する必要があります。VMwareハードウエア互換性ガイドおよび、Hyper-Vの概要では、ハードウエア要件および、ソフトウエア要件を確認することができます。Hyper-V Serverは、64ビットCPUが必須であること以外、特筆すべきハードウエア要件はありませんが、VMware vSphere Hypervisorを利用する場合、インストールできないという事が無いように注意が必要です。また、サポートされる仮想マシン数、仮想マシンに割り当て可能なCPU、メモリ、ディスク容量など仮想マシンのハードウエア要件も異なりますので、仮想マシンのスペックにも注意する必要があります。
図 1 ハードウエア互換性ガイドの検索条件
図 2 ハードウエア互換性ガイドの検索結果
ハードウエア仮想化ソフトウエアのシステム要件
VMware vSphere Hypervisorおよび、Microsoft Hyper-V Serverのシステム要件(抜粋)は、大規模システム構築にも対応可能なシステム要件となっています。また、無償版のMicrosoft Hyper-V Serverでは管理インターフェースがコマンドラインのみとなっていますが、有償版のMicrosoft Hyper-V Server 2012では、GUI管理インターフェースが提供されています。対して、VMware vSphere Hypervisorでは、これまでと同様にVMware vSphere Clientを利用して、仮想マシンの管理を行うことができます。
カテゴリ | リソース | VMware vSphere Hypervisor | Microsoft Hyper-V Server |
---|---|---|---|
物理マシン | CPUアーキテクチャ | IA64 | IA64 |
論理CPU数 | 160 | 320 | |
物理メモリ容量 | 32GB | 4TB | |
実行可能な仮想マシン数 | 512 | 1,024 | |
割当可能な仮想CPU数 | 2,048 | 2,048 | |
必要な仮想化支援機能 | Intel VT/AMD-V | Intel VT/AMD-V | |
仮想マシン | 仮想CPU数 | 8 | 8 |
仮想メモリ容量 | 32GB | 1TB | |
仮想ファイバーチャネル | 利用可能 | 利用可能 | |
最大仮想ディスクサイズ/形式 | 2TB/VMDK | 64TB/VHDX | |
ユーザーインターフェース | VMware vSphere ClinetによるGUI管理インターフェースを提供 | CUIによるコマンドラインインターフェースを提供 |
まとめ
ここまで、情報システムのアウトソーシングおよび、情報システムのリニューアルを検討している企業の担当者を対象に、ハードウエア仮想化について紹介しました。ハードウエア仮想化による情報システムの運用は、これまでの物理サーバーによる運用に比べ、運用コストの軽減を図ることが可能です。ハードウエア要件も厳しく、構築や運用には認定パートナーやリセラーだけで無く専門の運用管理者が必要になることは否めません。しかし、冒頭で紹介したAWSなどの商用VPSサービスを利用することで、情報システムのアウトソーシングも可能になり、専門の運用管理者を必要としないシステム運用が可能になります。
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