(Photo by:Philippe Put)
このような方におススメ
- フォントのライセンス判断に困っている。
- オープンソースのライセンスが適用されているフォントの利用条件を知りたい。
フォントにオープンソースのライセンスが指定されていると、目的の用途で問題なく利用できるのかな?と不安に思ってライセンスについて調べる事も多いと思います。
購入するフォントはライセンスが明確に記載されている場合が殆どなのと、用途を伝えると利用について的確に答えてもらえるのですが、これがLGPLやApacheライセンスなどオープンソースで使われているライセンスの場合は、フォントの利用用とによって調べ直す事になります。
フリーウェアとして公開されているフォントは独自ライセンスで書かれていることも多くありますし、最近は少なくなりましたがカンパウェアで連絡下さいといった曖昧なライセンスも依然として使われています。
本記事ではフォントで良く使われるオープンソースのライセンスとそれ以外のライセンスの商用利用、埋め込み(エンベデット)、同梱(バンドル)についての利用可能かとその制約についてまとめました。
印刷物やウェブサイトで利用する画像ファイルにフォントを利用する場合は、用途説明がされている場合が多いためあまり困る事はないのですが、iOSやAndroidアプリにフォントを埋め込んで利用する場合や、配布するインストーラーに同梱する場合は判断に迷う事が多いかと思いますのでお役たて下さい。
パブリックドメイン
商用利用、埋め込み、同梱可。制約なし。
パブリックドメインは最も分かり易いライセンスです。制約なく自由に利用できるのでアプリやソフトウェアのどのような形態であっても問題がありません。類似したライセンスとしてはフリーソフトウェアがありますが、こちらは利用範囲と制約が存在する場合が殆どですので、都度利用条件を確認して下さい。
SIL Open Font License (OFL)
商用利用、埋め込み、同梱可。ライセンスの明示が必要。
フリーに利用できるフォントライセンスです。単体での再販はできませんが、何かしらのソフトウェアを同梱させることで販売が可能です。商用利用も可能で、ソフトウェアに組み込んでの利用に制約がありません。
フォントを改変した場合、フォント名に元フォント名を含める事ができないのと、改変した旨の明記が必要です。また、ライセンス変更が不可となり改変後のフォントにはSIL OFLが適用されます。
あまり聞かないライセンスだと思いますが、SIL OFLが適用されている有名どころとしてアイコンフォントのFontAwesome(http://fortawesome.github.io/Font-Awesome/)があります。アプリケーションの同梱に当たりOFLであることの明示が必要です。
GPL(GNU General Public License)
商用利用、埋め込み、同梱可だが含めたソフトウェアはGPLが適用される。
GPLを使って作られたソフトウェアはGPLのコピーレフトに従ってGPLで配布する必要があります。そのためGPLなフォントをソフトウェアで利用した場合、そのソフトウェアはGPLで配布しなければなりません。そのため商用利用は可能ですがソースコードを公開して問題が無い状況に限られます。
LGPL
商用利用、埋め込み、同梱可だが含めたソフトウェアはリバースエンジニアリングを許可する。
ソフトウェアが他ソフトウェアに組み込まれて利用する場合にLGPLが採用されます。フォントではSIL OFLとLGPLのデュアルライセンスでどちらかを選択できる形式を見かけます。
もしLGPLのフォントをソフトウェアに埋め込んだ場合、そのソフトウェアはリバースエンジニアリングを許可する必要があります。そのため多くの商用ソフトウェアではGPL同様にLGPLのフォントを組み込むのは難しいかも知れません。
BSDライセンス(修正BSDライセンス)
商用利用、埋め込み、同梱可。ライセンス表記が必要。
自由度が高い商用で利用できるライセンスです。ソフトウェアにフォントを埋め込んだ場合とアプリケーションにバンドルした場合は、ライセンス条項がアプリケーション内に表記されている必要があります。大抵はAboutやLicenseといったアプリケーションの動作には影響がない個所に他ライセンスとまとめて表示します。
MITライセンス
商用利用、埋め込み、同梱可。ライセンス表記が必要。
BSDライセンスと同様に扱えるライセンスです。BSDライセンスと同じく重要な部分にライセンス表記が必要です。
クリエイティブ・コモンズBY 3.0
商用利用、埋め込み、同梱可。クレジット表記とリンク明記。
ウェブ素材や写真で良く利用される、制約の組み合わせによって利用条件を指定できるライセンスです。フォントでも利用されていて、よく適用されているのを見かけるのはCC BY 3.0です。
制約はクレジットの表記とライセンスへのリンクです。もしフォントに変更を加えて改変していれば、改変している旨を明記する必要があります。
Apacheライセンス2.0
商用利用、埋め込み、同梱可。ライセンスの明示が必要。
商用利用、アプリケーションへの埋め込み、同梱が可能です。配布されているフォントで良く見られます。利用にあたりライセンス表記が必要です。SIL OFLが一般化された後は、新しくApacheライセンス2.0をフォントに適用するケースが減っていると思います。
フォントを改変した場合、フォント名に元フォント名を含める事ができないのと、改変した旨の明記が必要です。また、ライセンス変更が不可となり改変後のフォントにはApacheライセンス2.0が適用されます。
ライセンスの記述がない
商用利用、埋め込み、同梱について不明。制約も確認が必要。
ライセンスの記述がないフォントは取扱いに注意が必要です。他フォントを改変して再配布されているものや、合成フォントで複数フォントを合わせて作られているがライセンスを満たしていない、元々のライセンス条項を無視して作られたフォントである可能性が存在します。無難なのは利用しないことです。
有料フォント(シェアウェア含む)
商用利用、埋め込み、同梱、制約について条件に従う。
ライセンスについて分かり易いのが有料フォントです。利用規約やライセンス条項に利用条件が明記してあります。アプリに埋め込むのは問題ない事が多いですが、同梱は許可していない事が多いです。利用にあたり不安がある場合は、販売元に連絡をして確認します。
カンパウェア(ドネーションウェア)
商用利用、埋め込み、同梱、制約について条件に従う。
扱いに困るのがこのライセンスです。有料なのかフリーなのかはっきりしないのと、作者に用途を伝えても返信が来ない場合もありますし、場合によっては商用利用OKだったり不可だったりします。とにかくはっきりしないので、利用にあたり作者から許諾を受けた証拠を残す事が求められます。
リンクウェア
商用利用、埋め込み、同梱、制約について条件に従う。
最近はあまり見かけませんが、リンクを条件としてフォントが利用可能になるライセンスです。商用利用その他については別途明記されている場合が多いです。不明点がある場合は作者に確認された方が良いです。リンク出来ない場合は有料とする場合もありますので、この場合は作者宛てに連絡を取る必要があります。リンクしたことへの対価としてフォント利用を許可していると捉えると、リンクウェアはGoogleがウェブスパムとしているリンクペイドに当たる可能性があります。
まとめ
利用状況や配布条件によっては利用できないフォントもあるため、問題なく利用できると判断できるフォント以外は社内や外部の詳しい担当者に相談した方が安全です。フォント作者に用途について問い合わせる方法もありますが、連絡が付かない、または問い合わせが多いため返信をお断りしている方もいらっしゃいます。まず自分で調べた後に相談するようにしましょう。
商用フォントはライセンス違反に対して厳しい対処が取られるケースがあり、ライセンス違反が調査により明確になると訴訟になる可能性があります。もしフォント再販に当たる行為を行うと著作権侵害による賠償金が発生する可能性がありますので再配布に関してはお気を付け下さい。
(Photo by:Mike Ashton)
フォントは自由に使われやすい反面、ライセンスによって守られないと遺法コピーなどによりフォント作成側が損害を被ります。Winnyに代表されるP2Pによって違法コピーが蔓延し国内PCゲーム業界が大打撃を被った時期があったように、フォントもライセンスで守られないと日本語フォントの衰退を招きかねません。フォントはライセンスを守って利用するよう心がけましょう。
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