(Photo by:Chris Potter)
現在はクラウドネイティブの時代と言われ、様々なサービスがクラウドで提供されている。一昔前はオンプレでの導入が常識だったERPの世界でも、数多くのクラウドERPが出現している。
しかし、全ての企業がクラウドERPの導入に成功している訳ではない。そのため、どの様な場合にクラウドERPの導入に成功するのかを見ていきたい。
まず、この記事でクラウドERPと呼ぶものは、いわゆるSaaS形式で提供されるERPを指す。AWSやAzure等のクラウド環境上で、ライセンス購入したERPを運用する事をクラウドERPと呼ぶ場合もあるが、この場合はソフトウェアとしてのクラウドの特徴が薄いため、ここでは除外する。
さて、このクラウドERPのメリットだが、①初期費用が安い、②短期導入が容易(標準機能中心の導入で、アドオンはゼロ又は最小限とする)の2点があげられる。
しかし、これらのメリットは裏返すと、(1)長期ではトータルコストが高い、(2)自社固有の業務へのカスタマイズが難しい、というデメリットにつながる。
それでは、どのような場合にクラウドERPのメリットを享受できるのか?筆者は、半永久的なクラウドの使用を前提とせず、オンプレへの移行や使用中止の可能性がある場合に、メリットがあると考える。
例えば最近は、ASEAN地域の経済が上向きとなったため、ここに拠点を置く企業が増えている。日本の本社にオンプレのERPを導入済みだと、本社システムを拠点に展開しようとするが、失敗する事が多い。
なぜなら、東南アジア特有の税制や商慣習が日本で作ったシステムではカバーできない事が多いし、まだビジネスが不安定な拠点に多額のIT投資を行うと、拠点が廃止された際に投資を回収できないのだ。
(Photo by:Lenny K Photography)
このような場合に、クラウドERPを導入すると次のようなメリットを享受できる。
- A) 初期費用が安いため、仮に拠点が統廃合されても、損失が最小限に抑えられる。
- B) Global ERPのクラウド版は、各国の税制/商習慣をカバーしており、追加開発をしないでも、最小限、必要な機能をカバーできる。
- C) 拠点のビジネスが大きくなった場合、拠点の固有の要件を汲み入れたオンプレERPへ移行が可能である。
最大のERPベンダ―であるSAPを例に挙げると、拠点のライフサイクルに応じて、以下のシナリオが提供されている。
- ① 拠点の規模が小さい期間は、本社にはオンプレERP(SAP Business Suite)を導入し、拠点には初期費用の安いクラウドERP(SAP ByDesign)を導入する「2 Tier ERP」のシナリオが用意されている。
- ② クラウドERP(SAP ByDesign)は、複雑なプロセスはカバーしないが、小規模拠点に最低限、必要な標準機能が備わっている。
- ③ 拠点のビジネスが拡大した際は、拠点のByDesignをSAP Suiteへ移行するマイグレーションパスが用意されている。
(Photo by:George Thomas)
もちろん、クラウドERPにも使い続けるメリットはある。バージョンアップの必要が無いし、最新の機能をタイムリーに使用できる。
しかし、長期にわたって使い続けるとトータルコストが高くなる。又、ビジネス規模がある程度以上になった会社が、その企業固有要件が考慮されていない基幹システムを使う事は、あまり現実的ではない。
そのため、クラウドの時代だから、と言って、一律にクラウドERPを導入するのではなく、導入する組織の特性、将来の方向性を考慮して、クラウドかオンプレか、という選択していく事が必要となる。
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