(Photo by:Wagner Fontoura)
タイトルだけを見ると「なんのことやら」と思われるかも知れません。去年2014年の秋口にデンキヤギ株式会社が就業規則を Github で公開してから、オープンソースな就業規則が注目を集め始めました。
10人以上の従業員が所属する会社では、従業員が就業規則を自由に閲覧できる事が義務づけられています。そこで、デンキヤギ株式会社では Github 上に就業規則の最新版を公開しました。従業員はインターネット上で自由に閲覧する事が出来、更新状況も把握できるため、とても良い取り組みです。
本記事ではオープンソースとして誰でも自由に閲覧することが出来る「パブリックドメイン」で公開されている就業規則に触れてみたいと思います。
(Photo by:Alper Çuğun)
デンキヤギ株式会社 就業規則
(https://github.com/DenkiYagi/EmployeeHandbook)
就業規則をインターネット上で公開する先駆けとなった会社です。従業員の採用活動に当たり、パブリックドメインで公開された就業規則を見てもらう事で、会社の誠実さを理解してもらう事、福利厚生等のアピール、入社を前向きに検討してもらう材料として期待しているようです。
入社を検討するあたり事前に就業規則を見ると、求職情報には記載されない情報も確認できるため便利かも知れません。
採用面接で良くある質問に「自動車通勤の可否」があります。就業規則第2章第7条を読むと「原則として不可だが特別な事情がある場合は許可する。しかし事故などについては保証しない」と読み取る事ができます。
採用面接で質問される事はあまりありませんが、求職者側が実は気にしている事に「副業の可否」があります。就業規則第2章第8条「兼業の制限」を読むと原則として出来ないと分かります。
他には、求職者の心配点に採用フローと入社後の試用期間があります。就業規則第3章第9条~第14条までに人事に関する事柄と、提出物や試用期間が記載されていますので、入社前・入社後の流れと会社での過ごし方のイメージが持ちやすくなります。
福利厚生の給与に関する点として、賃金規程第1章第17条住宅手当で「自己名義の賃貸住宅は1か月あたりの賃料の50% を支給する 」とあり、前条で正社員は通勤手当25,000円を上限としてこの範囲内に収めるとありますので、内定後の条件確認で、提示された給与には手当が含まれているのかについて質問をすると、入社後に実は手当対象外で事前に話を受けていた給与と異なった等のありがちなトラブルを回避できるかも知れません。
このように就業規則の情報が公開されていると、具体的な就業イメージが持てますので、充実した福利厚生がある場合は積極的に公開した方が採用に関してメリットがありそうです。
株式会社フォーエンキー 就業規則
(https://github.com/yuka2py/EmployeeHandbook)
デンキヤギ株式会社の就業規則を参考に(フォークして)作られたとても Git らしい作り方がされている就業規則です。コミット内容を見ると主にスペルミスの修正と、福利厚生の予防接種補助の削除、退職金規定の削除等の自社に合わせた変更が加えられています。
元文書から変更が加えられている点として出張旅費規程の日当があります。社長と役員で2倍、社長と一般社員で4倍の差があります。役員に日当が多く支払われるのは一般的ですが、4倍差となると妥当な日当であるとの理解がされづらいため、役員報酬以外で給与を役員に支払う方法として、日当を利用しようとしているではないのかと思われるかも知れません。
社内規程を従業員外に公開すると社内事情を鑑みない解釈がされる可能性があるため、社内規程をパブリックドメインで公開する事には一定のリスクが存在しそうです。
株式会社トランスリミット 社内規程
(https://github.com/Translimit/company-regulation)
フォークされている訳ではありませんが、デンキヤギ株式会社を元に作成した就業規則のようです。自社独自の福利厚生やキャリアパスに関する制度が足されており、求職者側から見て、入社後のイメージを助ける事が出来ます。
社内規程を開発対象として扱い、従業員からプルリクエストを送る事で、会社と協議の上で社内規程に反映が可能なシステムを採用しています。これは前向きで建設的な仕組みですが、従業員がインターネット上パブリックな場所で名前を出して社内規程改訂の要望を送ることは勇気が必要そうです。
従業員から見て就業規則・社内規程で守られていない問題があり、かつ解決する見込みがなく、それによって不利益を被っている場合は労働基準監督署に相談する流れになります。もし従業員の立場で就業規則・社内規程にコミット出来るのであれば、従業員に不利益が発生し労働基準監督署に問題解決を委ねに行く前に、社内で解決できる可能性が出てくるため有益な取り組みになりそうです。
株式会社アウルキャンプの就業規約
(https://github.com/owlcamp/EmployeeHandbook)
これもフォークされている訳ではありませんが、デンキヤギ株式会社を元に作成した就業規則のようです。この以前から公開していたものを見つけましたが(https://github.com/togtog/office_regulations)新しくフォーマットを整えて公開しなおしたようです。
コーポレートサイトに就業規約を公開する理由を「従業員への周知のため」「外部に福利厚生・環境を伝えるため」「以後続く企業へ貢献するため」と3つ簡潔にまとめています。
( (Photo by:U.S. Army)
要約・まとめ
入社後の従業員に対して公開・周知の義務がある文書を、入社前または部外者に公開する必要はありませんが、会社の透明性を保つ試みとして注目を集めています。
就業規則をパブリックドメインで扱うと、新しく入社する従業員に会社の透明性・福利厚生・環境をアピールするなど、採用活動のプラス効果を期待できます。反面、多くの人の目に触れる中で本来の意図とは異なる解釈をされ、内容に悪意が無かったとしても問題がある会社かも知れないとネット上で出回ってしまうリスクも存在します。
社会には従業員に対し就業規則を頑なに公開したがらない企業もありますので、それと比べれば就業規則をパブリックドメイン上で公開する事は健全性のアピールになります。
就業規則は今の時代に合った内容であるほど会社を守る上で有益です。新しい雇用形態としてリモートワークや再雇用についての規定、新型うつ病への対応も求められます。法改正にともなって修正が必要になる場合もあります。
厚生労働省からモデル就業規則が配布されているように、就業規則は汎用的な性質を持ちます。そのためオープンソースとして共有されると、独力での定期更新が難しい中小企業の助けになります。オープンソースな就業規則はまだ始まったばかりの活動ですので、今後の展開が楽しみです。
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