(Photo by:miya-aki)
このような方におススメ
- 行政で利用されているオープンソースの事例を知りたい。
- どのような分野で利用されているのかを知りたい。
オープンソースは信頼性や安定性が欠けて不安と言う意見が多くありますが、それを払拭するかのように経済産業省によるオープンソースの推奨・活動支援、IPA情報処理推進機構によるセキュリティのアナウンスや啓蒙活動が行われています。
これら活動のおかげか、日本国内の行政・地方自治体でもオープンソースが利用され始めていますので本記事ではオープンソース採用の有名な事例を3件程ピックアップしてどのようなオープンソースが採用されているのか紹介します。
国立国会図書館サーチのシステム
国立国会図書館が提供しているウェブ検索システム「国立国会図書館サーチ」(URL:http://iss.ndl.go.jp/information/system/)で利用されている主なオープンソースを列挙します。
- Hadoop(分散処理フレームワーク)
- Heritrix(WEBクローラー)
- GETAssoc(連想検索エンジン)
- Next-L Enju(図書館システム – Ruby, Ruby on Rails, PostgreSQL, Solr)
構成を簡単に説明すると、各種データソースを1つのデータベースにまとめて、そこから用途に合わせたインデキシングを行って利用者にインターフェイスを提供するシステムです。
注目はMITライセンスで提供されている「Next-L Enju」図書館システムを採用している点です。各社が販売・サポートしている図書館システム/電子図書館システムを利用せずにオープンソースが採用されています。
「Next-L Enju」はRuby on RailsとPostgreSQLで構成されたUnix系システムで動作するアプリケーションです。GitHubでRailsのコードが公開されていますので、どのようなコード/gemを使っているか参考になると思います。
資料収集のためシステムではクローラーに「Heritrix」を採用しています。図書館サイトをスクレイピングして逮捕された事件(URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/岡崎市立中央図書館事件)を思い出しますが、図書館が外部にクローラーを走らせる分には問題ないようです。
- Next-L Enju
- 公式URL: http://www.next-l.jp/?page=Next-L+Enju
- GitHub: https://github.com/next-l/enju_leaf
- Hadoop
- 公式URL: http://hadoop.apache.org/
- GitHub: https://github.com/apache/hadoop
- Heritrix
- 公式URL: https://webarchive.jira.com/wiki/display/Heritrix/Heritrix
- GitHub: https://github.com/internetarchive/heritrix3
- GETAssoc
- 公式URL: http://getassoc.cs.nii.ac.jp/
会津若松市のオープンオフィス(OpenOffice.org)/リブレオフィス(LibreOffice)
2008年にマイクロソフト社のOfficeからオープンソースのOpenOfficeに切り替えた事で話題になりました。今はOpenOfficeの後継と言えるLibreOfficeに乗り換えています。
- Apache OpenOffice URL: https://www.openoffice.org/ja/
- LibreOffice URL: http://www.libreoffice.org/
オフィスファイルはフォーマットがOpenDocument(ODF)として仕様が公開されています。そのためOpenDocument形式をサポートするソフトウェアであれば互換性がありファイルを開けるのが特徴です。
OpenOffice登場以前にデータの取り扱いを特定企業に依存することのデメリットが議論されており、その結果オープンな規格としてOpenDocumentとOpenXMLが作られました。過去、マイクロソフト社はOpenXMLを推奨していましたが現在はOpenDocumentにも対応しています。
- OpenDocument URL: http://docs.oasis-open.org/office/v1.2/OpenDocument-v1.2-part1.html
- OpenXML URL: http://www.ecma-international.org/publications/standards/Ecma-376.htm
マイクロソフト社のオフィスからOpenOffice/LibreOfficeから切り替えるメリットして、ライセンス料の低減(コスト削減)があります。導入コスト、保守・サポート費用を天秤にかけての判断になります
コスト以外のメリットとしては行政から市民サービスの向上があります。公式サイトから各種申請様式を配布する際に、エクセル/ワードなどマイクロソフトのオフィスにファイルフォーマット限定されているとオフィスを購入していない市民は一部の市民サービスを利用できません。ファイルが開けてもレイアウトが大きく崩れているといった事もあります。
LibreOfficeで作られたファイルで配布されていれば、無料で利用できるLibreOfficeをインストールした市民は無料で市民サービスを利用できるようになります。
デスクトップ環境としてUbuntuを導入
Windowsがデスクトップ環境で圧倒的なシェアをもちますが、徐々にですがライセンス料が掛からないLinuxデスクトップ環境の導入事例がでてきています。WindowsXPのサポートが2014年に終了している事もあり、新しくPCを購入するタイミングでライセンス料がかからないUbuntuなどのデスクトップ環境を検討する例もあります。
事例1: 大阪府交野市 Xubuntuを再生利用
2010年、大阪府交野市がマイクロソフトのOSサポートが終了した中古パソコンの活用として、オープンソースのOpenOfficeと合わせて軽量版Ubuntu のXubuntuを採用しコスト削減を行いました。
事例2: 北海道夕張市 臨時職員向けPCにUbuntu導入
2007年に財政破綻し借金353億円を返済中の北海道夕張市が2009年に選挙で臨時の雇用職員が利用するPCにUbuntuを導入しています。民間企業から無償提供を受けた償却済みパソコン26台(CPUはPentium III/700~800MHz、メインメモリーは512Mバイト/2009年時点)で動くデスクトップOSとしてUbuntuが採用されました。夕張市の借金時計(http://www.city.yubari.lg.jp/contents/municipal/zaisei/s_tokei/)を見ると、CPUだWindowsだOfficeだと言っていられない切迫した状況が伝わります。
他学校教育や学習環境ではUbuntu(Edubuntu)が使われている事例もあります。
- Ubuntu Desktop URL: http://www.ubuntu.com/desktop
- Edubuntu URL: https://www.edubuntu.org/
要約・まとめ
事例が徐々にですが増えることによってオープンソースへの理解が進み行政自治体でも民間企業のようにオープンソースへのコミットが増えて行くと、今までプロプライエタリに支払っていた運用コストを削減できるようになって自分たちの力によってベンダーロックインを外すことが出来るようになると思われます。
PCの用途がブラウザとオフィスソフトのみの利用の場合は、Windowsを使い続ける必要がないためライセンス費用がかからないLibreOffice/Ubuntuの導入事例が目立ちます。
どの自治体でも民間企業と同じ用に調達コストと運用コストを意識しますので、プロプライエタリと比べて遜色ないサービスを提供できるオープンソースのサードパーティー企業が増える事で競争が生まれ、行政・自治体のサービス拡充に繋がり、市民サービスの向上にオープンソースが貢献するように発展していくことが望まれます。
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