(Photo by:Kenny Louie)
神に罰せられた「バベルの塔」
旧約聖書の中に、天まで届く巨大な塔を建てようとして、神に罰せられた「バベルの塔」の話が登場しますが、人類は再び地上と宇宙を結ぶ全長10万キロに及ぶ巨大な建造物、「宇宙エレベーター」を作ろうとしています。
宇宙エレベーターのアイデア自体は1895年、当時のソビエトの科学者であったコンスタンチン・ツィオルコフスキーによって考案されたと言われ、その後、約100年もの間、実現不可能なSFと片付けられてきましたが、近年の技術開発によって、その実現可能性は飛躍的に高まってきており、映画「2001年宇宙の旅」の原作者アーサー・C・クラーク氏も、2003年の時点で、次のように述べています。
「宇宙エレベーターは、それを笑うものがいなくなってから10年のうちに建設されるだろう。そして今ではもう誰も笑う者はいなくなっている。」
↑もう宇宙エレベーターを笑う者はいない(Photo by:ITU Pictures)
国際宇宙エレベーターコンソーシアムの会長であるピーター・スワン氏によれば、宇宙エレベーターの優位性は従来の宇宙ロケットを上回っており、従来、ロケット全体の質量の9割以上が燃料であるため、常に墜落・爆発の危険と隣合わせになりますが、太陽光パネルなどを使う宇宙エレベーターはエコを極めており、無制限かつ安全に人やモノを輸送することが可能になります。
この宇宙エレベーターの実現に向けて、解決しなければならない最大の課題とも言われていた、宇宙空間と地上を繋ぐケーブルについても非常に軽く、強度は鋼鉄の10倍と言われるカーボンナノチューブの発見により、夢は実現に向けて大きく前進し始めました。
↑宇宙エレベーターは無制限かつ安全に人やモノを運ぶことができる(Photo by:Joxe Aranzabal)
カーボンナノチューブを発見した名城大学の飯島教授は、この発見について、次のように述べています。
「カーボンナノチューブ発見の裏には、電子顕微鏡技術、炭素物質研究、鉱物学研究、そしていろいろな材料研究など、積み重ねてきた経験や実績があります。こうした事前の準備があってこそ、“セレンディピティ”が生まれたのだと思っています。」
「セレンディピティ」という言葉は、「セレンディップの3人の王子」という童話に基づいていて、物語の王子たちが注意深く、洞察力に優れていたために、自分たちがもともと探していなかった素晴らしいものと偶然に出会うことができたという意味で使われます。
↑セレンディピティは様々な場所から生まれる(Photo by:Kenny Louie)
牛乳、ワイン、ビールの腐敗を防ぐ低温での殺菌法を開発したフランスの科学者ルイ・パスツール氏は、「観察の領域において、偶然は備えのある心にしか恵まれない」と述べましたが、ノーベルによるダイナマイトの発見、キュリー夫妻によるラジウムに発見など、探し続ける中での奇跡的な偶然から生まれた偉大な発見を挙げれば、キリがありません。
ソフトフェア開発者であり、デザイナーでもあるステフ・レヴァンドブスキ氏は、セレンディピティを可能にするためには、他の人から提案を受けた時に無理だと思ったとしても、「でも…」と言ってすぐに代替案を提示するのではなく、「分かりました。では…」と言って、その提案の実現可能性を考えるべきだとアドバイスしています。
↑観察の領域において、偶然は備えのある心にしか恵まれない(Photo by:NASA Goddard Space Flight Center)
起業後たった6年で自社開発の人工衛星を宇宙に送り出した植松電気の植松氏は、「そんなものできるわけない、やってもムダだ」という言葉は人の心を確実に殺すものであり、「だったら、こうしてみたら」だけが効果的なセリフと強調します。
無重力施設や小さなロケットの開発にも成功した植松努氏は、研究開発を行っていくうちに、NASAから次世代スペースシャトルの開発を委託されているロケットプレーン社と一緒に仕事ができるようになったキッカケを、次のように述べています。
「宇宙開発の打ち合わせに行ったはずなのに、彼(副社長のチャック)は僕にサムライのことばかり聞いてきます。・・僕もたまたまそういうことに詳しかったので、答えることができました。そうして、仲よくなったんです。」
(NASAより宇宙に近い町工場 僕らのロケットが飛んだ /植松努)
↑「やってもムダだ」という言葉は確実に人の心を殺す(Photo by:NASA Goddard Space Flight Center)
宇宙エレベーターには、まだまだ課題は山積みで、例えばカーボンナノチューブは、宇宙空間を繋ぐほどの長さにした場合に、物資や人を運ぶためのゴンドラを支えられるはずがない、といった批判もありますが、2050年までに宇宙エレベーターの実現を目指している建設会社、大林組でプロジェクトに携わっている石川洋二氏も、課題の解決には協力者との出会いが重要と考えており、次のように述べています。
「私は1つの会社でこのプロジェクトを成功させられるとは考えていません。このプロジェジェクトを成し遂げるためには、国際的な組織を必要としています。」
↑まだまだ課題は山積みの宇宙エレベーター(Photo by:NASA Goddard Space Flight Center)
旧約聖書でバベルの塔を見た神は、「彼らは一つの民で、皆一つの言葉を話しているから、このようなことをし始めたのだ。これでは、彼らが何を企てても、妨げることは出来ない。」として、塔とともに言語も壊されますが、宇宙エレベーターも大企業や一つの国が独り占めをするのではなく、もっと多くの知恵が集結しなければ、完成することはないのかもしれません。
同じ方向を見ている世界のチームがお互いの知識を共有し、人として仲良くなれば、「セレンディピティ」が生まれる可能性が高まり、宇宙エレベーターの開発の課題は解決され実現することでしょう。
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