人類が宇宙に目を向け始めたことで数千トンもの衛星やロケットが宇宙空間に投入され、近年では宇宙旅行も登場するほど、未知の世界だった宇宙は私たち民間人にとってもますます身近なものになってきました。
しかし、この宇宙開発は必ずしもポジティブな面ばかりではなく、現在「スペース・デブリ」と呼ばれる宇宙ゴミが宇宙空間にどんどん増えており、宇宙環境に多大な影響を及ぼすことになるだろうと言われています。
↑宇宙開発が進んでいく反面、宇宙の“環境破壊”が問題になっている
スペース・デブリには、遺棄された人工衛星やその打ち上げに使用されたロケット、またそれらの爆発・衝突によって生じた破片の他、宇宙遊泳中の宇宙飛行士が手放してしまった工具や手袋なども含まれており、このスペース・デブリ問題の重大さは、専門家が「一番深刻な宇宙の環境問題であり、今後、民間宇宙旅行が実現しロケットが頻繁に飛ぶようになれば、宇宙はさらに混雑し被害が拡大する可能性もある」と指摘するほどです。
また、スペース・デブリの大きさは3mm程度のものから1m以上のものまであり、1950年にはゼロだったスペース・デブリは1~10cmの小さなもので50万個、さらに1cm以下のものになると数千万個以上存在すると推定されています。
これらは秒速約8kmという早いスピードで地球の周りを動いていて、わずか10cmほどの小さな破片でも、宇宙船を完全に破壊できるほど強力なエネルギーなのです。
↑人類が宇宙を目指すほど、「スペース・デブリ」問題を悪化させる
実際、スペース・デブリによる衝突はこれまでに250回以上起きていると言われており、宇宙ゴミの衝突を回避するシステムが開発されるも、スペース・デブリを減らすための根本的な解決策には至っていません。(1)
スペース・デブリを回収しないことにはいずれ宇宙開発に支障が出てくることが予想され、またあまりにも危険なため、宇宙旅行を頻繁に実施することができないのは確実でしょう。今、スペース・デブリは人類の宇宙活動にとって無視できない脅威となっているのです。
↑スペース・デブリによる大事故が起きるのも遠い未来の話ではない
宇宙空間の平和利用のための方法や法律を検討する国際機関、「国連宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)」でもスペース・デブリについては議題に上がり、深刻な問題であると認識されているのですが、スペース・デブリの除去によって直接的な利益が出るわけではないので誰もお金を出したがらず、各国の宇宙関連機関は具体的な一歩を踏み出せないでいます。(2)
このように、世界が足踏みをしている状況にいてもたってもいられなくなった一人の日本人男性、岡田光信氏は、誰も始めないなら自分が始めてやろうと、2013年にスペース・デブリ問題の解決を担う企業「アストロスケール」をシンガポールに設立、2015年には日本法人を東京に設立しました。
↑宇宙のゴミ拾いは当然利益が上がるような仕事ではない
アストロスケールは設立以降、大学との連携による共同研究や高度な製作技術を有する多くの企業と連携しながら小型衛星の開発に取り組み、現在ではその関連企業は50社以上にもなっていますが、当初は岡田氏が挑戦しようとしていることに対して、すべての人がポジティブな反応を見せたわけではありませんでした。
地方の中小企業の経営者から「あなたに惚れた」と言われて協力を取り付けることができた一方で、「スペース・デブリ問題というものがありまして・・・」と説明する岡田氏に対して変人扱いする人もおり、協力者を募るのは一筋縄ではいかなかったと言います。
↑どんなに熱意を込めて伝えても理解は得るのは容易ではない
そんな苦境の中、協力者として名乗りを上げてくれたのは、愛知県に本社を構える切削工具で世界的トップ企業「オーエスジー」です。
オーエスジー常務取締役である大沢二朗氏はアストロスケールの社員と出会い、宇宙開発を行う中で、スペース・デブリが宇宙開発の大きな妨げになっていることや、人工衛星・気象衛星、あるいはGPSといったものをおびやかしていることを知りました。
そして、世界が問題と認識しつつも実際の行動に移さない中で、具体的にこの問題に挑戦しようとするアストロスケール社に大きな感銘を受け、自分たちもスポンサーになることを決意したのです。
↑「できる・できない」が問題じゃなく、自分たちで挑戦してみたい
また、日本法人アストロスケール社の代表取締役社長を務める伊藤美樹氏は、宇宙を題材にした映画を見たことがきっかけで宇宙に興味を持ち、宇宙に関する専門家になるため大学では宇宙工学を専攻、アストロスケール社の重要な協力者の一人でエンジニアとしても活躍しています。
かつて、宇宙という壮大、且つ、未知のものを相手にしようとしている彼女に対し、周囲からは「そんなことは無理だろう」などと散々批判的な意見をもらったそうですが、それでも宇宙の道を諦めなかった理由を次のように述べました。
「周りに宇宙について勉強したいという友達もいませんでしたから、ならば自分がやってみようという気持ちもありました。」
こうして現れた協力者と共に、現在、ハエ取り紙のような粘着剤でスペース・デブリをくっつけながら回収していくという方法を採用し、軽くて宇宙でも使える粘着剤を搭載した衛星「IDEA OSG1」を開発しています。
↑「自分がやる」という思いが、スペース・デブリ問題を解決に導く
アストロスケールへの参加のきっかけはそれぞれ異なりますが、「誰もやらないなら自分がやろう」という気持ちやその気持ちに共感したことが一つの軸になっていることは間違いありません。
元ライブドア社長の堀江貴文氏は、ビジネスにおける実力と行動力の高さから起業を目指す人たちに一定の支持を受けており、最近では民間宇宙旅行ビジネスに参入し話題となりました。
そんな堀江氏はメルマガを含め、人から相談を受けることが多くあり、相談にのってせっかくアドバイスをしても、「でも〇〇だから、それはできない」と言われることが頻繁にあるそうで、堀江氏はその“でも”が自分自身を不自由にしているのだと指摘しています。
↑やりたいことができないのは環境のせいじゃなく自分自身が原因
お金を理由に実行に移せないという人もよく見かけるケースですが、例えば、クマムシ研究科の堀川大樹氏が有料メルマガ、LINEスタンプなどを作りながら研究資金を稼ぎ、自分のやりたい研究を自由にできる環境を作り上げているように、いまや熱意とやる気があれば資金を集めることは可能なのです。
できない理由ばかり考えていても前進できるはずがなく、もっと自由に行動した方がシンプルに前に進んでいくことができるのではないかと、堀江氏は次のようにアドバイスしています。
「『でも』『でも』と言い訳を積み重ねてきた上に、今の自分がいる。『でも』という縛りをとってあげるだけで、もっと自由に行動を起こしていけるのではないだろうか。」
↑「でも」、「でも」という一言が、どんどん人をダメにしていく
アストロスケールの岡田氏は宇宙物理学や天文学を学んだわけではなく農学部出身で、さらには起業するということに対しても全くの素人でしたが、「自分がやりたいからやる」と自由に行動したことで着々と目標に向けて前進しているのでしょう。
自由に行動を起こしたことで、岡田氏はスペース・デブリ問題の解決に一歩ずつ歩みを進めており、IDEA OSG1は2017年前半の打ち上げを予定しています。
↑誰が何を目指そうと、自由なのだ
現在、岡田氏の仲間になってスペース・デブリ問題を解決したいと望んでいる行政経験者や技術者は多く、今もなお世界中の若い人々から履歴書が届き、履歴書の中には次のようなメッセージが多く見受けられるそうです。
「政府がやらないのなら、俺がやる」
目標達成には専門的な知識や技術が必要なのは否定できませんが、ただ、それ以前に「自分がやってやる」と強く志すことが初めの第一歩となり、そして、そういった強い志を持ったメンバーが集ったチームは確実に目標を達成する力を持っているのです。
1. 岡田光信 「宇宙起業家 軌道上に溢れるビジネスチャンス」 (2014年、ブックウォーカー) Kindle 189
2. 岡田光信 「宇宙起業家 軌道上に溢れるビジネスチャンス」 (2014年、ブックウォーカー) Kindle 227
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