(Photo by:Jane Quigley)
はじめに
近年、IT業界ではクラウド・コンピューティングや情報システムの仮想化が提唱されており、GoogleやAmazonなどの大手IT企業だけで無く、国内においてもクラウド・コンピューティングや情報システムの仮想化が活発に利用され、企業や個人が気軽に利用できるようになっています。ここでは、近年活発に利用されている情報システムの仮想化のメリットについて紹介します。
仮想化とは
仮想化(Virtualization)とは、「コンピューターリソースの抽象化」です。情報システムを構成するコンピューターは、OS、CPU、メモリ、ネットワーク、ハードディスク、アプリケーションなどのさまざまな物理リソースで構成されています。仮想化は、単一の物理リソースを複数の論理リソースに見せたり、複数の物理リソースを単一の論理リソースとして見せることができます。つまり、コンピューター上で複数の論理的なコンピューターを実行したり、複数の物理コンピューターを1つのコンピューターとして実行することができるため、情報システムを構成する全てのコンピューターを、1台のコンピューター上に論理コンピューターとして構築することができます。仮想化は、米国のVMware社が1999年に発表したVMware Workstationが最初の仮想化ソフトウエアとして知られており、近年のコンピューター性能の向上とともに、急速に利用され始めています。
※図1 情報システムの仮想化
メリット1:セキュリティ対策が容易に
情報システムの仮想化による1つ目のメリットは、セキュリティ対策を容易に行うことができることです。企業の情報システムでは、通常UNIXやWindowsなどのさまざまなOSが物理コンピューター上で稼働しています。これらのOSのセキュリティ対策を行うためには、システム停止→セキュリティパッチの適用→システム再稼働→システム異常確認と言った順序で管理を行います。この方式では、コンピューターに適用するセキュリティパッチの妥当性を確認するために、本番用の情報システムの代替機が必要となるため、例えば、情報システムを10台のコンピューターで構成している場合、最低20台のコンピューターを管理する必要があります。しかし、仮想化システムでは、1台のコンピューター上で複数の論理コンピューターを実行しており、これらの論理コンピューターのセキュリティ対策を行うために、20台の論理コンピューターを管理する必要はありません。仮想化システムでは、必要になった時点で論理コンピューターの複製を行い、セキュリティパッチの妥当性を検証し、本番機の論理コンピューターと入れ替えて利用することができます。このため、セキュリティ対策を行う際に、最小の論理リソースで、全ての論理コンピューターのセキュリティ対策を実行することができます。また、全ての論理コンピューターを1台の物理コンピューターで管理するため、セキュリティ対策を一元化することもできます。
※図2 仮想システムのセキュリティ対策
メリット2:開発プラットフォームの提供
情報システムの仮想化による2つ目のメリットは、開発プラットフォームが容易に提供できることです。ハードウエア、ソフトウエアメーカーだけで無く、企業ではさまざまなソフトウエアを開発しています。特にソフトウエアメーカーでは、パソコン向け、スマートフォン向けなどのように、さまざまOSでソフトウエアが動作検証が必要になります。パソコン向けでは、Windows 7やWindows 8だけで無く、Windows ServerなどのサーバーOS上での動作検証が必要な場合が多く、これらのOSが稼働する検証用コンピューターを管理することも容易ではありません。さらに、Windows OSのセキュリティ対策の適用状況によって動作しないケースなどがあった場合、検証用のコンピューターはさらに増加していまいます。これらの検証用のコンピューターを仮想化システムで構成することによって、異なるOSおよび、セキュリティ対策が異なる論理コンピューターを作成できるため、検証用コンピューターを必要になった時点で追加し、検証環境として常に利用することができます。このように、仮想化システムでは、ソフトウエアの動作検証プラットフォームを容易に提供するだけで無く、システム開発においても、必要な開発プラットフォームを提供することができます。
※図3 VMware Server上の仮想マシン
メリット3:システムの維持管理コストの削減
情報システムの仮想化による3つ目のメリットは、情報システムの維持管理コストを低減できることです。仮想化システムでは、複数の論理コンピューターを作成し、物理コンピューターと同様にセキュリティ対策やシステムの負荷分散などのモニター業務を行います。セキュリティ対策は、システムのセキュリティ管理の一元化とセキュリティ対策の運用が容易になることは、メリット1で述べたとおりです。システムモニター業務では、負荷が高くなった論理コンピューターに対し、割当られたCPU、メモリ、ディスク容量を動的に増やし、論理コンピューターの実行優先度を上げることで容易に負荷分散を行うことができます。つまり、仮想システムでは、特定の論理コンピューターに対して動的に物理コンピューターのリソースを配分することができるため、物理コンピューターのようにリソース不足によってシステムパフォーマンスが低下することを最小限に留めることができます。さらに、物理コンピューターの場合、メンテナンスするハードウエアは、稼働する物理コンピューターの数になりますが、仮想化システムでは、物理コンピューター1台のハードウエアメンテナンスのみとなります。このため、ハードウエア障害によるシステムの停止リスクを大幅に軽減できます。このように、仮想化システムでは、物理コンピューターの維持管理と比較して、ハードウエアメンテナンス、動的負荷分散が行えるため、システムの総保有コスト(TCO)の低減を行うことができます。
※図4 維持管理コストの軽減
クラウドによるシステムのアウトソーシング
これまでの説明で、仮想化システムのメリットについてお判り頂けたのでは無いでしょうか。しかし、仮想化システムをオンプレミス(買取型)で維持管理するためには、専門スキルを持った情報システム管理者が必要であることも確かです。オンプレミス型で企業内に仮想化システムを構築する場合、ネックとなるのが専門スキルを持った管理者を養成することにありますが、近年ではクラウド・コンピューティングを利用した仮想システムのアウトソーシングが注目されています。これは、オンプレミス型で利用する仮想化システムをクラウド上に実装したもので、仮想化システムをアウトソーシングしたものになります。アウトソーシングでは、仮想化システムのモニターを行い、動的負荷分散などの管理業務を行うだけとなりますので、仮想化システムを構築する際に必要な専門スキルを必要としません。このように、仮想化システムのアウトソーシングは、仮想化システムを誰でも簡単に利用できるメリットを提供しています。
まとめ
ここまで、情報システムの仮想化のメリットについて紹介しました。仮想化システムは、物理コンピューター上に複数の論理コンピューターを実行することで、セキュリティ対策の一元化とセキュリティ対策の容易性を提供し、さらにハードウエアメンテナンスやシステムモニタリングなどの維持管理コストを低減することで、情報システムの総保有コストを低減します。仮想化システムのアウトソーシングにより、誰もが簡単に情報システムの仮想化を行うことができるようになって来ましたので、仮想化システムについて検討してみては如何でしょうか。
弊社ではインフラの仮想化に関するご相談を承っております。
本ブログは、Git / Subversion のクラウド型ホスティングサービス「tracpath(トラックパス)」を提供している株式会社オープングルーヴが運営しています。
開発の効率化をしたい!もっと便利なツールを使いたい!そんなお悩みをtracpathで解決!
「tracpath(トラックパス)」は、企業内の情報システム部門や、ソフトウェア開発・アプリケーション開発チームに対して、開発の効率化を支援し、品質向上を実現します。
さらに、システム運用の効率化・自動化支援サービスも提供しています。
”つくる情熱を支えるサービス”を提供し、まるで専属のインフラエンジニアのように、あなたのチームを支えていきます。
No Comments