(Photo by:Origami48616)
ファッションデザイナーの三宅一生さんは、「折り紙の服」をコンセプトとする「132 5. ISSEY MIYAKE」を立ち上げ、コンパクトでコストや資源の無駄を削減できるエコドレスとして注目を浴びており、フランスのパリにあるEspace Japon(エスパス・ジャポン)では、フランス人向けの日本語講座や料理講座とならんで、定期的に折り紙の講座が開かれています。
また、「ORIGAMI」の国際的な認知度は高く、今や「ORIGAMI」はデザインや文化交流を超えて、医療、科学、そして電化製品など、様々な分野で応用されていることは、日本ではほとんど知られていません。
↑折り紙は文化交流を超えて、科学、医療の分野へ(Photo by:fdecomite)
ロバート・J・ラングさんは、物理学の研究をやめて、折り紙の専門家となり、折りたたみ式の宇宙望遠鏡のレンズを開発し、TEDで「折鶴と宇宙望遠鏡」についてのプレゼンテーションを行った際には、折り紙のように幾何学的に美しいものが、実際の製品作りに役立つことは多いと語って歓声を浴びました。
2009年に放映されたNHKのドキュメンタリー番組「地球ドラマチック ORIGAMIマエストロ~折り目が作る無限の宇宙」では、その考え方について次のように語っています。
「私が作品に求めるのはリアルさです。(中略)本物と同じ形、同じ比率で作りたいのです。そういうリアルな作品は偶然では作れません。試行錯誤でできるものでもありません。コツコツ研究して完成するしかないんです。だから私は折り紙に数学的・幾何学的な考え方を取り入れています。」
↑折り紙のリアルさは偶然では表現できない(Photo by:Steve Jurvetson)
折り紙が「ORIGAMI」として世界に広まったのには、前述のロバートさんをはじめ、多くの折り紙専門家に影響を与えた吉沢章という2005年に逝去した日本の折り紙作家の作品があります。
吉沢氏は生涯に5万点以上の作品を残しましたが、吉沢氏が始めた、折り方の手順を「折り図」にして示す方法は、日本語に頼らずに世界中に折り方を伝えることを可能にし、1960年代には20程度の手順のものが主流だったのが、今では200以上の手順を越える作品が登場するまでになり、折り紙には物理的な限界はないと言われるようになりました。
そして1989年以降、「折り紙の科学・数学・教育国際会議(OSME)」が開催されるようになり、物理学者、コンピュータ研究者、生物学者、そして数学者など、世界で折り紙をテーマに研究をしているさまざまな分野の人々がアイデアを交わすことができるようになっています。
↑折り紙をテーマに様々な分野の人達が交差する(Photo by:Duncan Hull)
最も汎用性の高い折り紙技術として世界に認められている、東京大学名誉教授の三浦公亮さんが発見した「ミウラ折り」は、1枚の紙を誰でもできるほどのシンプルな工程で小さく折りたたんで整えるだけで完成し、一見とてもありきたりな折り方に見えますが、「ミウラ折り」の面白さは、一端を開こうとすると、順々ではなく自動的に全体が開く、つまり、一つの折り目が全体とリンクしている点にあります。
↑「ミウラ折り」を使うと、地図も簡単に開閉できる(Photo by:Adam Smith)
「ミウラ折り」は太陽光発電ができる宇宙ヨット「イカロス」の帆から、一般的な地図まで、多方面で使われていて、その展開図を見ると、すべてのマス目がひし形になっており、そうなることで、一気に開くことができるだけでなく、破れにくくもなります。
↑折り紙のメカニズムは宇宙でも立派に活用される(Photo by:NASA Goddard Space Flight Center)
三浦さんは、NHK番組「爆笑問題のニッポンの教養」に出演した際に、この折り目は実際は自然界にも多数存在し、原理は普遍であることを次のように述べていました。
「数学はパターンです。パターンは人間が利用しようが、植物が利用しようが、あるいは宇宙のどっかで利用しようが同じ原理で動いている。」
↑パターンはどこで、誰が使っても同じ原理で動く(Photo by:fdecomite)
折り紙の技術が目覚しい進歩を促しているのは宇宙の分野だけではなく、2003年に「折紙研究会」を立ち上げた明治大学研究・知財戦略機構の萩原一郎特任教授は、「ORIGAMI」を産業化することを目標に、「折り紙式3Dプリンター」の開発に力を入れています。
3次元データから折り紙の展開図を印刷する方法を研究して、折り曲げる過程も自動化するために、折り紙用ロボットの開発も手がけており、南カリフォルニア大学のYong Chen准教授も、モノづくりを短時間かつ低コストで行うことを可能にするために、折り紙式3Dプリンターの研究を続けているそうです。
↑折り紙ロボットの開発もどんどん進んでいる(Photo by:ercument gorgul)
また、20歳で博士号をとり、マサチューセッツ工科大学の教授となった折り紙理論者エリック・ドメインさんは、生物の体内で無数に動いているたんぱく質がほぼ同じ形に折りたたまれていて、間違って折りたたまれることが病気につながるという関係性に注目し、たんぱく質を折りたたむ数学モデルの開発に取り組んでいて、その数学モデルをエイズなどの難病の治療薬の開発に役立てようとしています。
↑折り紙は予期しない分野の問題解決につながる(Photo by:Helgi Halldórsson)
バーチャルリアリティや3Dなど、二次元から三次元へという発想が進んでいますが、前述のエリック・ドメインさんが「ORIGAMIは立体から平面へという低次元化の問題を解決する」と述べていたように、古くからあるものや身近なものに目を向けると、意外なところに難問を解くヒントとなる数学モデルが隠れていて、新たな革命はそこから始まる、ということがまだ他にもたくさんあるのかもしれません。
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