(Photo by：DFID – UK Department for International Development)
近年、シリコンバレーでエンジニアの争奪戦が熾烈を極めており、実際、グーグルやフェイスブック、そしてツイッターといった「ユニコーン」と称される急成長企業のスタープレイヤーの給与水準はまさに”破格”で、年棒10億円を超える場合も少なくありません。
グーグルの上級副社長を務めるアラン・ユースタス氏は、「一流のエンジニアは平均的なエンジニアの300倍の価値がある」と語っており、また、ビル・ゲイツ氏も、「同じ仕事でも能力に応じて報酬に大きな差があってもかまわない」という考えを持っているようで、どれだけ高額な報酬を出そうとも、優秀なエンジニアを採用することで、圧倒的な経済的見返りが得られるとして、次のように語っています。（1）
「優秀な旋盤工の賃金は平均的な旋盤工の数倍だが、優秀なソフトウェア・プログラマーは平均的なプログラマーの10,000倍の価値がある。」
↑同じ仕事でも能力に応じて報酬に大きな差があってもかまわない(Photo by：ImagineCup)
シリコンバレーにおけるエンジニアの争奪戦は凄まじく、元グーグル社員のRodrigo Ipinceさんに言わせれば、「まさに売り手市場」であり、自身がグーグルに勤務していた5年間、少なくとも1～2通のスカウトメールが毎日ヘッドハンターから届いていたと言い、Rodrigoさんは、グーグル退社後、数多くの「ユニコーン」から熱烈なラブコールを受けつつも、ゲームプレイ動画共有サービスのスタートアップ、Kamcordへの入社を決めました。
↑エンジニアの争奪戦「凄腕のエンジニアの元には毎日スカウトメールが届く」(Photo by：TechCrunch)
数年前までは、ヤフーやマイクロソフトから人材を引き抜く側であったグーグルが、一転、人材を引き抜かれる側になったとも言え、テクノロジー関連の人材紹介会社として知られるDave Partnersの創業者、Dave Carvajai氏はこの流れについて、「今どきの若いエンジニアをときめかせるものは、高い成長性と実行の速さ」
↑10,000倍の価値を生み出すエンジニアが企業を選ぶ理由は、必ずしも給料や待遇だとは限らない(Photo by：Victor van Werkhooven)
これまでは、欧米のトップスクールのMBA（経営学修士）を取得したような層が、最も優秀な人材とみなされており、“創造性”豊かな人材というよりは、数字を緻密に管理することに長けたマネジメント型の人材が必要とされてきましたが、「優秀な人材」の定義そのものが変わってきていることは、最先端企業の人材に対する考え方にも見られ、テスラ・モーターズを創業し、スティーブ・ジョブズを超える天才と言われるイーロン・マスク氏も、「MBAは最低限しか雇わない」と語っています。
↑MBAは、20世紀の遺物(Photo by：Heisenberg Media）
すべてのモノやサービスにインターネットがコネクトされる未来を考慮すれば、今後、エンジニアの需要がますます高まることは間違いありません。
例えば、自動車産業において、自動運転技術が破壊的なイノベーションとして注目を集めていることを見れば明らかなことですが、既存の産業にとっても、テクノロジーは切っても切り離せない関係にあるようで、米国に本拠地を置く調査会社、ガートナーでシニア・バイスプレジデント兼リサーチ部門の最高責任者を務めるピーター・ソンダーガード氏は、これから生き残る企業はすべてIT企業なのだと結論づけ、次のように述べています。
「2020年には、企業内のあらゆる予算がIT関連になり、すべての企業がIT企業になる。」
↑2020年にはすべての企業がIT企業になる(Photo by：Savannah River Site)
米国では、オバマ大統領が、国民全員にプログラミングの勉強を促すなど、プログラミング教育の重要性を訴えていますが、エンジニアの供給がそうすぐに増えることは考えづらく、エンジニアの奪い合いはまだまだ終わりそうにありません。
イーロン・マスク氏とともにペイパルを立ち上げ、エンジェル投資家としても知られるピーター・ティール氏も、「コンサルタントあがりの人間はいらない」と述べており、「ゼロ」から「イチ」を生み出す人材こそが、これからのビジネスの主役になることを力説していますが、テクノロジーの進化はとどまることを知らず、“エンジニアの時代”は、まだまだ始まったばかりといえるでしょう。
※主な参考
1.（ワーク・ルールズ！ー君の生き方とリーダーシップを変える/ラズロ・ポック）Kindle P5228
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