以前、WindowsにJobSchedulerをインストールする手順を解説からJobSchedulerの機能評価を行いました。この記事では実際の企業システムの現場でどこまで利用できるかの見解を書きます。
導入事例
Job Scheduler開発元の顧客一覧(URL:http://www.sos-berlin.com/customer-list)に、Job Schedulerを使っている企業一覧が含まれています。この中からJob Scheduler導入企業を一部抜粋しました(OSS版を導入している企業情報は含まれていません)。
- Alegeus Technologies, アメリカ / Control-Mからのリプレイス
- PostFinance(スイス最大の金融サービスプロバイダー), スイス
- Accarda AG(決済会社), スイス
- City of ‘s-Hertogenbosch, オランダ
- Goverment of New Caledonia DTSI, ニューカレドニア
- Federal Department of Justice and Police (EJPD), スイス
- Deutsche Post Direkt GmbH, ドイツ
有償サービスを受けた企業実績を見ると、ダウンロード数は公開されていませんがOSS版を利用している企業は結構な数がありそうです。
日本国内での導入実績が増えてきていると言った記事を見かけますが、具体的な企業名や運用規模が情報として出てきていません。広く利用されるのはこれからになるようです。
ライセンス・サポート
有償サポートを受けない場合、ライセンスはGNU GPL2.0になります。Job Schedulerを使って自社内のシステム構築を行う分には問題は起こりませんが、他社に納品した後や再販、他システムに含められた場合にGPL特有のライセンス継承と互換性の問題が起こります。
そのため自社利用以外での用途によっては利用できない可能性があります。有償ライセンスを購入し、サポートを受けてGPL以外のライセンスを適用する、または開発元にライセンスについて相談をする必要があります。
企業によってはクライアントにGPLを含んだソフトウェアを納品する事に気を付けていると思います。社内SEも同じくGPLの扱いに注意していると思います。
GPLは制約があると認識されているライセンスのため、運用上に何も問題がないとしても決済者を理解させるのが難しい場合があります。
ソフトウェアのライセンスに疎い外部からGPL2.0のリスクについて間違った情報が入ると、安全な利用であっても見えないリスクを避けるという理由を覆せない場合があります。
そのためOSSへの理解がある組織、ソフトウェアライセンスの正しい知識をもった相談相手がいる組織はJob Schedulerの導入ができますが、それ以外の組織では導入が難しい場合が多いと思われます。
(Photo by:photosteve101)
競合・類似ツール
商用フリー問わず、類似のプロダクトやツールが多数存在します。各種プログラミング言語のライブラリ単位でもバッチ処理スケジューラーが存在しています。CronやWindowsタスクスケジューラなどOS標準の簡易スケジューラーもあります。
Job Schedulerのメリットの1つは、OSSで高性能なジョブスケジューラーを初期費用無しで導入できる点にあります。そのためJob Schedulerは社内にPC1台を置いて運用できる小規模であれば選択肢に十分入ると思います。
反面、規模が大きくなるとミドルウェアの運用やデータ転送、可用性を高めるための冗長化、モニタリング等が関係してくるため、インフラ構築を含めたパッケージとして提供されているツールの導入が魅力的に感じます。Job Schedulerを使ったパッケージを提供しているベンダーは多くないので、他ツールと同じ事が出来たとしても提案できる企業が少ないという理由で採用されないものと思われます。
ただ、Job Schedulerについては日本国内で環境構築含めてサポートするベンダーが登場しましたので、日本国内でもこれから比較検討され始める段階にあります。
(Photo by:woodleywonderworks)
導入難易度、求められるスキル、情報量
導入に関してはそれほど難しいものではありません。データベースやOS、モニタリングツール等の利用するミドルウェアの知識は運用上、必要になります。
情報量はマニュアルが整備されています。事例別でのケーススタディも充実しています。ただし、日本語での情報は事例含めて多いとは言えません。
トラブルが起こった時や緊急時に対応できるベンダーは極限られた数しかありませんので、自社内で運用上の問題を解決できない企業組織での導入は注意が必要になるかも知れません。
可用性の確保、モニタリング
複数系統を準備しての構築が可能な仕組みが備わっています。この部分を環境に合わせて1から作る必要はありません。Job Schedulerサーバー、データベース等のミドルウェアをモニタリングして障害発生時にはアラートを出す仕組みは独自に構築する必要があります。
結論・要約
企業システムに導入できるか?については小規模であれば問題ないが、規模が大きくなると難しく他類似ツールの選択が現実的です。
他類似ツールやプロダクトと比較されると、日本国内での運用実績が少なく、技術者とベンダーが少ないJobSchedulerは不利です。また日本語情報が少なく、日本語のマニュアルが無い点も影響してきます。
JobSchedulerが機能面で劣っている印象はあまり持ちませんので、数年かけて情報量が増え実績が出来てくると状況が変わるかも知れません。
今まで小規模なバッチ処理システムを自作していた企業も多いと思います。cronなど標準で利用できるジョブスケジューラーを軸にシステム構築をしている企業も多いと思います。
Job Schedulerを使えば学習コストは必要となりますが独自に開発する必要がなくなるため、小規模なバッチシステムを代替えする用途に合致します。社内に1台PCを置いてスタンドアローン構成で運用できる規模であれば重宝すると思います。
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